冬野一馬
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺には人には言えない秘密がある。
俺は、『自分と愛し合った人が死んでしまう』という呪いがかけられているらしい。
物心ついてすぐの頃、真剣な顔で両親から話されたことを今でもよく覚えている。
勿論信じていなかった。そんなバカバカしい話、信じられるはずがない。
…でも、親が交通事故で死んで、友達は連続で事故にあったりどんどん俺の周りの人達がいなくなった。
初めは半信半疑だった俺も、大切な人が俺の前から消えてくうちに、だんだん信じていくようになった。
…それでも、俺には、唯一呪いのことを知っていて、それでも一緒にいてくれ佐藤翔真という親友がいた。
翔真は、将来有望な天才テニスプレイヤーだった。常に明るくて、人一倍努力家。俺が、呪いのことを話した時も、『そんなもん、俺がぶっ飛ばしてやるよ!お前には俺がついてるからな!』と、笑い飛ばしてくれた。
翔真は、俺にとって誇りの親友だった。誰よりも努力していたのも知っていたから、翔真が褒められると俺も嬉しかった。
…でも、翔真は…事故にあって歩くことさえ出来なくなってしまった。
『お前のせいで!!お前のせいで俺はテニスが出来なくなった!お前なんかと関わらなきゃ…!お前なんかと一緒にいなきゃ!俺にはテニスが全てだったのに…なぁ…俺の足、なんで動かないんだ…?返せよ…返してくれよ!』
『ごめん…翔真…ごめん…』
俺は泣きながら叫ぶ翔真に、謝ることしか出来なかった。
ーーこの時、俺は悟った…『俺は人と関わっちゃいけない』のだと。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!