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第1話

不幸は突然に…
28
2018/03/31 11:39
ーー俺は人とは関わっちゃ行けない。ーー

その事を忘れていた訳じゃない。でも…人の温もりは思ったより暖かくて、人との関わりは思ったより楽しくて。

それに…!1年も何も無かったから、大丈夫なんだと勘違いしてたんだ。

それが夏目をどんな危険に合わすかも知らずに……


『プルルルルルル』

あれ?夏目だ。なんの用だろ…
あ!今日あいつの誕生日だからか!

ふっふっふ( ̄▽ ̄)ニヤリッ

去年忘れてて散々に言われたからな!今年は前もって準備してあるんだよ!
冬野一馬(とうのかずま)
あ、おー夏目?今日だろ?お前の誕生日!今年はなー、ちゃぁーんと前もって…
警察官
あ、鈴菜夏目さんのご友人の方ですか?
冬野一馬(とうのかずま)
?はい、そうですけど…どなたですか?
それ…夏目の携帯ですよね?
警察官
あ、挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。私、福岡県警の菅原と申します。冬野一馬さんで間違いありませんか?
冬野一馬(とうのかずま)
えっ?そうですけど…
警察の方が何のようですか?
警察官
実は夏目さんがーーーーーーーーーー
『ガシャンッ』

耳を疑った。
嘘だろ?
夏目…夏目…夏目!
警察官
もしもし?大丈夫ですか?もしもし?
『ダッ』 

俺は走り出していた。
警察官
ーー夏目さんなんですが、ーー
ごめん、夏目、ごめん
冬野一馬(とうのかずま)
はぁ…はぁ…
警察官
ーー実は飲酒運転の車に轢かれてーー
俺のせいで…ごめん
冬野一馬(とうのかずま)
はぁ…はぁ…
警察官
ーー今、意識がない状態なんですーー
冬野一馬(とうのかずま)
あの…はぁ…はぁ…鈴菜夏目の病室って…?
看護師
えーっと…
鈴菜夏目さんでしたら305号室です。
冬野一馬(とうのかずま)
…ありがとうございます…!
『ガラッ!』
冬野一馬(とうのかずま)
夏目!
病室のドアを開けるとそこには痛々しい姿の夏目がいた。

でも俺は、夏目が生きていて、しかも意識があることに喜んでいて、状況をよく分かっていなかった。状況を理解するヒントはいくらでもあったというのに。

一命は取り留めて意識まであるのに夏目の隣で泣きじゃくっている夏目の両親。

頭に巻いた器具。

ーーそれにーー
冬野一馬(とうのかずま)
夏目…!
意識が戻ったんだな!
俺は嬉しくなって、たまらず夏目に抱きついた。

…すると夏目の白く細い腕が、遠慮がちに俺を引き離した。

そして俺を見つめると、戸惑った顔で言った。
鈴菜夏目
…誰?
あなた
ーーそれにーー
夏目の瞳は真っ黒で何も写していないようだった。
冬野一馬(とうのかずま)
えっ…?
どうしたんだ?夏目?
俺は訳が分からず、助けを求めるように夏目の両親を見た。

すると、夏目の両親は、とても辛そうな顔をして、重々しく口を開いた。
夏目 母
夏目はね……

記憶喪失なの。
ーー覗いた夏目の瞳には、目の前の俺さえも写っていなかった。ーー

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