第58話

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2020/05/10 02:51
あの日から2ヶ月

毎日のように誰かしらが訪ねてきては、氷咲の様子を見て帰っていく
氷咲を縁側に座らせて、一方的に話をすることが日課になった

……決していいことではないが。
しなずがわ  さねみ
しなずがわ さねみ
鬼がいなくなると暇でしょうがねェ
しなずがわ  さねみ
しなずがわ さねみ
……ってお前には分かんねェか


少し気を抜くと涙が止まらなくなる

朝は、氷咲と今日を無事に終えられることを願い、

夜は、再び朝日が昇るまで生きられることを願う




あの時から変わったことと言えば、

氷咲の表情が変化するようになったことだ。


こちらの話が聞こえている訳じゃなさそうだが、時々苦しそうな顔をする。


苦しそうな顔を見るのはこっちも辛いが、

夢の中で氷咲も、何かと戦っているんだろう。

***
私なんかが、生きていていいのだろうか

役目は終わったのだから、私は死ぬべきなのではないか
きぶつじ むざん
お前は、裏切り者だ
きぶつじ むざん
私たち鬼は、虐められていたお前を救ってやったんだ
そんな声が聞こえる度に、苦しくなる。


それでも、


誰から何と言われようと、私は生きたい。



もう一度、もう一度でいいから


不死川さんに抱き締めてもらいたい
















「好きだ」と言ってもらいたい



そんな我儘は、贅沢は、許されないのですか?
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なんか最近短いな
まあいっか
気にしたら負け☆←

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