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雛鶴さんが宇髄さんにお酒を手渡しすると、一気に場の雰囲気が高まった。
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親父みてぇになりたくねェんだ
酒を飲んだら、人は変わる。
家族を殴り、首を絞める。あんなのはもう御免だ。
俺にだって親父の血は流れているわけで、
酒を飲んで、氷咲や他のやつらに手ェ出しちまったら…………
そう思うと、怖くて仕方がねェ
どうも気まずくなって、出来上がった料理を既に飲み始めた奴らの元へと運ぶため、
氷咲に背を向けた。
……酒くせぇ
あ~クソッ、嫌でも思い出しちまう。
この場に玄弥がいなくてよかったと、心の底からそう思った。
こいつらに混ざりたくもないが、台所で女に囲まれるのもなァ…………
そう思い、1人、廊下に出た。
不自然なくらいに静かに感じる。
もはやぎしぎしと床が軋む音すら心地よく感じてしまう。
ゆっくり歩いていると、後ろから自分がたてたものではない音が聞こえてきた。
俺の言葉を遮り、そう告げた。
………そんなこと、断言できねェだろ。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。