第22話

十六話
「ターゲット、と申しますと?」

「連続殺人ですよ。あれ、言っていませんでしたか?」


 聞いていない。

 と言うか、何故彼が狙われるのか、皆目見当もつかないのだが。


「リナウドは忘れていますが、犯人はリナウドを恨んでましてね」

「え、いやいや!ここに来て恨みによる犯行をすると!?」


 意表を突かれ、思わず叫ぶと、神父は言葉を探すように沈黙する。


「恨みつつ、望んでいるのです。犯人は過去の復元を望んでいるのですから」

「待って下さい、意味がわからない!」


 しかし、俺の言葉がまるで届いていないかのように、神父は話し続ける。

 告解でもするかのように、ただ淡々と言葉を並べていく。


「リナウドは、犯人のことを覚えていません。それなのに、彼は死を恐れない」

「それは知っています。リナウドは、あいつは死にたがりだってこと」


 ダン!と壁を叩く音が聞こえた。木製の懺悔室が、ジンと揺れ、もう一度沈黙が訪れる。


「貴方は勘違いなさっている」

「……死にたがりでしょう。殺してくれと頼まれましたよ」

「彼は、いえ、”私たち”は断じて死にたがりでは無い」


 私たちだって?

 まさか、もしかしてこの男まで、俺に殺害を頼むつもりか?


「私たちは”殺されたがり”なのです。くれぐれも、言葉には気をつけて」


 壁を隔てていると言うのに、尋常ではない緊張感を感じる。壁があって良かった、そう思う程に。


「良いですか?死にたがりは私たちでは無く、貴方であるべきなのです」

「待って下さい、俺は死ぬつもりなんか無い」

「今は、ね」


 駄目だ、全く話が噛み合っていない。彼は本当に先程の人物か?人が変わったように、まるで建設的な話が出来ていない。

 それどころか、壁の向こうから布摺れの音がする。まさか立ち上がったのか。


「もう話すことはありません。準備が出来たらご連絡致します」

「待って下さい、まだ話は────!」


 ギィ、と錆び付いた音がする。慌てて懺悔室から飛び出したが、神父の姿はどこにも無い。

 教会中をくまなく探したが、結局彼は見つからなかった。

 しかし、気にしてはいられない。最大の収穫がある。それを元に動かなければ。


「……リナウドが、次の標的」


 俺の足は、もう一度病院へと向かっていた。