第18話

十二話
「なっ、何を馬鹿なことをっ……!」


 思わずソファから立ち上がった。

 馬鹿げている。冗談では済まされない。

 彼は自殺志願者だったのか?

 そんな風には見えない。

 むしろ、他者の生死を握ってほくそ笑むタイプだろう。

 いや、仮にも外科医なのだから、救う側だとも思うが。


「私の話はこれで終わりです。どうしますか、今ここで殺しますか?」


 そう言って、彼は自分の首を絞めるジェスチャーをする。

 その表情は、チェシャ猫のようで。

 ニタニタとイラつく笑みが張り付いていた。


「するわけが無い!早いところメモだけ渡せ!!」


 恫喝スレスレの怒鳴り声をあげる。

 彼はあっけなくメモを渡した。


「まぁ、ここで殺されても困りますしね。またの時にしましょう」

「そんな時は二度と来ない。……ここには、誰がいる?」


 メモに書いてあるのは、街外れの住所。

 あの辺りには詳しくないので、何があるのかピンと来ない。

 率直に聞くと、彼は数秒悩んだ後、


「……後援者パトロンですよ。私と人喰いの共通の知人」

「その男の家か?」

「職場と自宅、ですね。あぁ、そうだ」


 何かを思い出したように顔を上げる。


「貴方、義足や整形、なさってます?」

「いや、していない。それが何か」


 突拍子も無いことを聞くので、不審に思って聞き返す。

 しかし、彼は苦く笑うだけで、詳しく語ろうとしなかった。

 ただ一言、


「あの方は、歪なものがお好きですから」


 と、微笑ましそうに言っただけである。



 こうして、嘘のような聞き込みが終わった。

 手に入れた『人喰い』の情報と、彼の薬品を本部に預け、メモの住所に向かう。

 車を走らせると、高いビルや、薄汚れたネオンの無い、なだらかな丘についた。

 その丘の上、色とりどりの花々の奥に、一軒の建物が見える。

 それは、無神論者の俺にとって、あまりにも馴染みの無い場所だった。



「教会……?」