第17話

十一話
「話、と言うよりは依頼、と言った方が良いかもしれません」

「依頼……人喰いさんなら、言われなくても探し出すさ」

「せっかちだな。これだからチェリーは」

「だから、それは関係ないだろ!!」


 完全に遊ばれている。

 抵抗もむなしく、あっさり主導権を握られた。

 彼は眼鏡を押し上げると、話を続ける。


「先ほども申し上げたように、貴方にチャンスをあげるんですよ」

「人殺しのチャンスだったか?ハッ、馬鹿げている」


 強気に笑い飛ばす。

 さっきは混乱していたが、今は冷静だ。

 あんな幻覚はもう見ない。興味も無い。

 自分に言い聞かせながら、彼の言葉に囚われぬように気を引き締める。


「そもそも、チャンスって言ったって相手がいない」

「相手?チェリーからの脱却なら……」

「そうじゃない!そろそろしつこいぞ!」


 そう叫んでから、また遊ばれたことに気が付く。

 首を振って、頭を冷やす。


「冗談が過ぎましたね。殺す相手は誰か、と言うことでしょう?」

「殺したい相手がいるなら、アンタがやれ。ついでに手錠も自分でかけてさ」

「残念ながら、そうもいかないのですよ」


 彼は本当に残念そうにため息をつく。

 一呼吸置くと、真剣な眼差しで見つめてくる。


「これもさっき言いましたが、私は貴方に死因を決めて貰いたい」

「……それは、つまり」


 ゾワ、と背中に寒気が走る。

 その先を口にするのがためらわれ、言葉がそこで止まる。

 そんな俺の言葉を継ぐように、彼は口を開いた。

 ストレートに、嫌でもわかるように。

 少し気恥しそうに、それこそ、純粋な愛の告白のように。




「私を、殺して頂きたい」