第17話

十一話
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2020/04/29 09:27
「話、と言うよりは依頼、と言った方が良いかもしれません」

「依頼……人喰いさんなら、言われなくても探し出すさ」

「せっかちだな。これだからチェリーは」

「だから、それは関係ないだろ!!」


 完全に遊ばれている。

 抵抗もむなしく、あっさり主導権を握られた。

 彼は眼鏡を押し上げると、話を続ける。


「先ほども申し上げたように、貴方にチャンスをあげるんですよ」

「人殺しのチャンスだったか?ハッ、馬鹿げている」


 強気に笑い飛ばす。

 さっきは混乱していたが、今は冷静だ。

 あんな幻覚はもう見ない。興味も無い。

 自分に言い聞かせながら、彼の言葉に囚われぬように気を引き締める。


「そもそも、チャンスって言ったって相手がいない」

「相手?チェリーからの脱却なら……」

「そうじゃない!そろそろしつこいぞ!」


 そう叫んでから、また遊ばれたことに気が付く。

 首を振って、頭を冷やす。


「冗談が過ぎましたね。殺す相手は誰か、と言うことでしょう?」

「殺したい相手がいるなら、アンタがやれ。ついでに手錠も自分でかけてさ」

「残念ながら、そうもいかないのですよ」


 彼は本当に残念そうにため息をつく。

 一呼吸置くと、真剣な眼差しで見つめてくる。


「これもさっき言いましたが、私は貴方に死因を決めて貰いたい」

「……それは、つまり」


 ゾワ、と背中に寒気が走る。

 その先を口にするのがためらわれ、言葉がそこで止まる。

 そんな俺の言葉を継ぐように、彼は口を開いた。

 ストレートに、嫌でもわかるように。

 少し気恥しそうに、それこそ、純粋な愛の告白のように。




「私を、殺して頂きたい」




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