第20話

十四話
「おや、何か御用でしょうか」


 男性が教会から現れ、にっこりと微笑みかけてくる。

 風にたなびくストラの刺繍が、キラと光を反射する。

 不思議と緊張してしまって、背筋が伸びるのを感じた。


「あ、警察の者です。リナウドと言う方から住所を聞きまして……」


 警察、と聞いて驚いたように瞬きをする。

 しかし、すぐに微笑みを戻すと、ドアを大きく開く。


「どうぞ、お茶くらいならお出しします」


 情報も出してくれよ、と心の中でジョークを言った。




 通されたのは、まさかの懺悔室。

 男性の表情どころか、姿さえ見えない。

 紅茶と茶菓子は置いてあったが、何故懺悔室に?

 罪の告白でもしてくれるのか。

 いや、彼が犯人だとは思えないのだけれども。


「申し遅れました。私はレノックス・カー。この教会の神父をしております」

「あ、ジャンティーレ・マリナンジェーリです」


 板を隔てた声に、思わず答えてしまう。

 どうしたものかと悩んでいると、声だけが響いてくる。


「こんな形で申し訳ありません。こうでもしないと、冷静に話せないと思って……」


 言われてみれば、声色が少し硬いように思える。

 慣れた場所なら、気楽に話せるということか。

 まぁ、緊張して何も聞き出せないよりはマシと思おう。

 恐らく史上初の、懺悔室での聞き込み。

 さて、どこから聞き出そうかと居住まいを正す。

 その意気込みは、彼の声で完全に断ち切られた。




「私、犯人に心当たりがあります」