第10話

四話
「……以上だ」


 上司はこれまでの事件をざっと振り返りつつ、説明を終えた。

 途端、怒りを通り越した何かに襲われる。

 六人の被害者と、それを目にし命を捨てた人達。

 なんの罪も無く、奪われた幸せ。

 それが許せないのだ。一刻も早く、犯人を見つけないと。


「それでな、マリー。ここからが重要だ」


 今にも飛び出しそうになる俺をなだめるように、上司は続ける。

 取り出したのはもう一枚の書類。そこには、六件目の事件で使われた新薬が書かれていた。


「これの入手経路がわかるかも知れん」

「本当ですか!?じゃあ早くそれを調べて……」


 ガタリと立ち上がるが、肩を掴まれ座らせられる。不服だが、落ち着かないといけないのは事実か。

 上司は俺の深呼吸が終わるのを待って、話し始める。


「レックス・フォームドって、知ってるか?」

「はい、有名な俳優ですよね。最近手術で病気が完治したとか……」


 難病だったらしいが、天才外科医の手術により完治した。

 というニュースは、世間が殺人事件に震える中で、数少ない明るいニュースだ。

 手術が行われたのは、フラックリン市役所近くにある、大病院。

 医師の名前は、確か……


「エルネスト・リナウド、アイツが持ってるんだよ」

「え?」

「みんなのスターを救った男が、殺人事件の容疑者だ」


 それは、何というか。

 真偽に関わらず、マスコミが好きそうだな、と思った。