「遅いぞマリー、早く座れ!」
仕事場……もとい捜査本部に着いたが、そこには上司以外誰もいなかった。どうやら全員捜査に行ってしまったらしい。おかげで上司と二人っきりの捜査会議だ。
まぁ、とんでもない美女と二人っきりでも困惑するけど。
ちなみに、”マリー”は俺のニックネーム。俺一人にのみ大変不評である。
「すみません。それで、なんの事件でしょう」
平謝りしながら上司の反対側に座る。大したな事件じゃなかったら、この場で怒り狂ってやろうと思いながら聞く。上司はため息を吐きながらも、分厚い書類を渡してきた。
”フラックリン連続殺人事件⑥”
そう書かれた書類に思わず飛びついてしまう。
ここ数日、同一犯とみられる人物による殺人が続いていた。その数五件。ついに六件目が起こってしまったと言うわけだ。
あぁ、クソッタレ。どうやったらこんな死体を量産できるんだか。
書類に添えられた写真は、どれもこれも無残なものばかり。計五枚の中に、血だまりの写っていない無い写真は無い。
吐き気さえ覚える写真の数々に、口元を押える。上司も同じ感想のようで、それを咎められることは無かった。
「さて、説明を始めるぞ」
不快だ。不気味だ。
だが、それよりも腹立たしいのだ。
被害者たちは、こんな惨い死に方をするべきじゃなかったのだから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。