第21話

十五話
「………今、何と」

「心当たりがあるのです。連続殺害事件の、犯人に」


 厳格で、厳粛で、厳かな声色。

 冗談で発せられた言葉で無いことは、確かであろう。

 犯人と言うのは、やはり人喰いか。いや、彼はキブスと呼んでいるのだった。


「いえ、彼は犯人ではありませんよ。私はそれを知っています」

「アリバイがあると?」

「報道の日時が正しければ、その時彼はこの教会にいましたから」


 裏取りの出来ないアリバイとは言え、とりあえずメモは取っておく。何が手がかりになるか、わからないのだから。

 しかし、人喰いで無ければ誰が犯人だと言うのだろう。リナウドか?いや、彼にはアリバイがある……

 悩んでいても仕方がないので、単刀直入に聞いてみることにした。


「ミーシャ、と言う名前に聞き覚えがあるのです。とある男性の妻だ」

「ほ、本当ですか!その女性はどこにいます?」

「……十年以上前に、神のもとへ」


 しばし沈黙が訪れる。

 そうか、それほど前の死人の名前なら、今の生者と共通点が見つかりっこない。

 その女性について調べれば、もっと詳しいことがわかりそうだ。

 要点をメモしつつ、話を戻す。犯人とは、恐らくミーシャという女性の夫のことだろう。


「残念ながら、名前は教えられません。しかし、手がかりならばお渡し出来る」

「……まさか、その人も決まった名前が無いのですか?」

「いいえ。彼の名前を伝えては、とある少女が苦しむでしょう」


 それで察した。

 とある少女、それはきっとミーシャさんと、犯人と思われる男の子供なのだろう。

 名前を言えば、その子供はすぐにでも殺人鬼の子だと後ろ指を指される事になる。

 そう言われては追及することも出来ず、手掛かりだけを受け取ることにする。


「ご理解感謝します。手がかりと言うか、お手伝いですね」

「捜査の手伝い?一般人の関与は……」

「情報屋、ですよ。いらっしゃるでしょう?」


 確かに、ヤクの取り締まりなんかはそういった協力者も使う。

 正直、解決のためならばどんな手段もいとわないつもりではあるが……


「捜査情報を渡す必要はありません。欲しい情報を言えば、彼らは手に入れてきてくれる」

「そんな虫の良い話が、本当にあると?」

「ありますとも。良い話を持ってくるのが、後援者パトロンたる私の役目」


 後援者……か。

 確かにリナウドも彼をそう呼んでいた。良い話を用意するから、後援者。

 目的がわからないが、情報が手に入るならば何でも構わない。


「その方たちは一体どこに?」

「すぐには会えません。また準備が整い次第、ご連絡します」


 つまり何時になるかわからない、と。

 内心焦りを覚えるが、進展したことは間違いない。今は進展を喜ぼう。

 それに、彼に聞きたいこともまだ残っている。


「あの、人喰いさんの場所をご存じありませんか?」

「残念ながら。ですが、行くとしたらリナウドの所でしょうね」


 ふむ、先ほど病院では会っていないようなことを言っていたし、行き先は不明か。

 そうだ、リナウドについても聞いておきたい。

 あの異常さを、彼は知っているのだろうか。


「えぇ、彼はそういう人間です。人の死因や遺体を見るのが好きなんですよ」


 当たり前のように頷かれた。それどころか、耳を疑うことを続ける。




「今だって、次のターゲットにされる程に変わり者ですから」