第69話

Sweet69~大学のあの部屋
5,507
2023/01/26 06:55

数日が経ったある日。


ジョングクは仕事終わりに大学に来ていた。

通い慣れた門をくぐって、キャンパスの中を歩く。


数年ぶりに入った大学の雰囲気は、あの頃と何も変わっていなかった。

何度も来ていた部屋の扉の前に来て、大きく深呼吸をする。




ジョングク
ジョングク
ふぅ…………




コンコン……



???
……はい

ジョングク
ジョングク
……失礼します

ナムジュン先生
ナムジュン先生
……ジョングク君!
ジョングク
ジョングク
すみません……連絡もせずに
ナムジュン先生
ナムジュン先生
全然いいよ……そこ座って?




ジョングクは促された椅子に座った。

乱雑に置かれた書類や、高く積まれた本。


何も変わらない部屋の様子に、つい笑みがこぼれる。




ナムジュン先生
ナムジュン先生
……良い顔してるね
ジョングク
ジョングク
えっ……
ナムジュン先生
ナムジュン先生
この間会った時より
良い顔してるよ……
ジョングク
ジョングク
そうですかね……
ナムジュン先生
ナムジュン先生
うん……君がここに来たってことは……

ジョングク
ジョングク
はい……描けました
ナムジュン先生
ナムジュン先生
そうか……良かった……




先生は引き出しから書類を1枚取り出した。



ナムジュン先生
ナムジュン先生
今年の国際公募展……
目指してみないか?
ジョングク
ジョングク
えっ……でもまだ…
ナムジュン先生
ナムジュン先生
俺は、やってみる
価値あると思うよ
ジョングク
ジョングク
……………
ナムジュン先生
ナムジュン先生
諦め悪くてごめんね
ジョングク
ジョングク
いえ……
ナムジュン先生
ナムジュン先生
……気楽にやってみない?
ジョングク
ジョングク
気楽に……ですか
ナムジュン先生
ナムジュン先生
うん、考え過ぎず、描きたい
ものを描きたいように描く……
ジョングク
ジョングク
描きたいように……
ナムジュン先生
ナムジュン先生
そう……君の思うように
ジョングク
ジョングク
……………
ナムジュン先生
ナムジュン先生
まぁ、まだ時間はあるし
ゆっくり考えてみて?
ジョングク
ジョングク
はい……
ナムジュン先生
ナムジュン先生
今度その絵持って来てよ……
久しぶりに君の絵が見たい
ジョングク
ジョングク
……わかりました
ナムジュン先生
ナムジュン先生
ちょっと、待ってて……
コーヒー入れてくるから




先生は部屋を出て行った。

机の上に置かれた書類に視線を落とす。



『第18回アルテ・ラグーナ賞』募集要項

※テーマは不問



ジョングク
ジョングク
………………




正直、チャレンジしてみたい気持ちはある。

ただ、今1つ自分に自信が持てなくて、踏み出せない。





ふと、この間自分の絵を見て、泣いて喜んでくれたテヒョンの顔が浮かんだ。



ジョングク
ジョングク
………………

ナムジュン先生
ナムジュン先生
お待たせ…はい、コーヒーどうぞ
ジョングク
ジョングク
ありがとうございます



先生はコーヒーを1口飲んでからまた椅子に腰掛けた。


ナムジュン先生
ナムジュン先生
そういえば……あの子元気?
……テヒョン君だっけ?
ジョングク
ジョングク
っ?!



ジョングクは飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。



ナムジュン先生
ナムジュン先生
……大丈夫?
ジョングク
ジョングク
は…はいっ……
ナムジュン先生
ナムジュン先生
テヒョン君、元気?
ジョングク
ジョングク
はい……元気です
ナムジュン先生
ナムジュン先生
なんか……あの子の笑顔
……忘れられなくてね……
ジョングク
ジョングク
えっ……
ナムジュン先生
ナムジュン先生
ドーナツも美味しかったし



ジョングクは動揺を隠す為に、コーヒーをまた1口飲んだ。



ナムジュン先生
ナムジュン先生
今度、一緒に連れて来てよ
ジョングク
ジョングク
へっ?!……は、はい
ナムジュン先生
ナムジュン先生
楽しみにしてるよ




ジョングクは先生にお辞儀をして、部屋を出た。


ジョングク
ジョングク
………………






ポケットに入れた携帯が震える。

見ると、テヒョンの文字。





テヒョン
『ぐぅちゃん終わった?迎えに来たよ』



ジョングク
ジョングク
……タイミング


ジョングクはすぐにカトクを返した。





ジョングク
『今、終わったよ…すぐ向かうね』


ジョングク
ジョングク
…………







ジョングク
『テテ……大好きだよ』








プリ小説オーディオドラマ