第71話

Sweet71~星に願いを(1)
5,383
2023/01/29 03:47

PM5:30






ジョングクが働いてるビルの最寄り駅で待ち合わせをしたテヒョンは、人混みの中、改札を出た。

電車に乗るのも、誰かと待ち合わせをするのも久しぶりで、なんだかドキドキする。


キョロキョロと駅の前を見渡すと、こちらを見てにこやかに手を振っているジョングクが目に入った。



テヒョン
テヒョン
ごめん、お待たせ
ジョングク
ジョングク
全然待ってないよ
俺も今来たとこ……
テヒョン
テヒョン
どこ行くの?
ジョングク
ジョングク
まだ内緒……こっからまた
電車に乗るけどいいかな?
テヒョン
テヒョン
……うん



ジョングクはテヒョンと手を繋いで歩き出す。

行き交う人達と目が合って、テヒョンは少し下を向いた。



テヒョン
テヒョン
………ねぇねぇ、ぐぅちゃん
ジョングク
ジョングク
なに?
テヒョン
テヒョン
……みんな見てる
ジョングク
ジョングク
えっ?
テヒョン
テヒョン
僕たち手繋いでるの……
ジョングク
ジョングク
気にならないよ
テヒョン
テヒョン
えっ……
ジョングク
ジョングク
俺はテテと手を繋ぎたい
テヒョン
テヒョン
っ…
ジョングク
ジョングク
もし、何か嫌なこと言う奴がいても
……俺が全力でテテを守ってあげる
テヒョン
テヒョン
ぐぅちゃん……
ジョングク
ジョングク
だから、気にしなくていい
……俺だけを見てて?
テヒョン
テヒョン
……わかった




電車の中は、仕事帰りや学校帰りの人で溢れている。

ジョングクは、テヒョンが押しつぶされないようにスペースを作り、両腕で抱きしめるように守っていた。




ジョングク
ジョングク
テテ大丈夫?
テヒョン
テヒョン
僕は大丈夫だよ
ジョングク
ジョングク
……なんか、顔色あんまり良くない
気がする…もしかして、具合悪い?
テヒョン
テヒョン
具合悪くないよ?
ジョングク
ジョングク
……そう?
テヒョン
テヒョン
……それより、どこ行くか
まだ教えてくれないの?
ジョングク
ジョングク
うん……次の駅で降りるよ




目的の駅で降りると、ジョングクはまたテヒョンの手をぎゅっと握った。



ジョングク
ジョングク
ここから少し歩く
けど……寒くない?
テヒョン
テヒョン
……大丈夫
ジョングク
ジョングク
一応これ巻いといて



ジョングクは自分のしていたマフラーをテヒョンに巻いて、繋いでいる手をポケットに入れた。


テヒョン
テヒョン
ありがとう…ぐぅちゃん
ジョングク
ジョングク
行こうか




歩き出した2人の横を、冷たい風が通り過ぎる。


テヒョン
テヒョン
ねぇ見て見て、ぐぅちゃん
息が真っ白だよ?ほら……



テヒョンは息を吐いてジョングクに見せた。

空に消えていく白い息を、儚げに見つめる綺麗な横顔。


テヒョンまで、消えてなくなりそうな寂しげな表情に、ジョングクは堪らず抱きしめた。




テヒョン
テヒョン
………どうしたの?
ジョングク
ジョングク
それはこっちのセリフ……
テヒョン
テヒョン
…………
ジョングク
ジョングク
今日病院行って…なんかあった?



テヒョンは、ジョングクの背中に回した手に力を入れた。



テヒョン
テヒョン
今日ね…先生に呼ばれてお話聞いて来たの
……ママ…もう長くないかもしれない……
ジョングク
ジョングク
そんな……
テヒョン
テヒョン
もう…随分前から覚悟はしてるけど
……それでもまだ行って欲しくない



ジョングクは更にぎゅっと抱きしめた。



ジョングク
ジョングク
テテ……今日1人で頑張ったね
テヒョン
テヒョン
うん……
ジョングク
ジョングク
……俺も…また一緒にお母さん
とこに行ってもいい?
テヒョン
テヒョン
…うん…一緒に行こ……



しばらくテヒョンの背中を撫でてから、2人はまた歩きだした。


なんとなく、見覚えのある景色にテヒョンは立ち止まる。



テヒョン
テヒョン
あれ……もしかして、ここ……
ジョングク
ジョングク
着いたよ
テヒョン
テヒョン
……プラネタリウム?
ジョングク
ジョングク
そう
テヒョン
テヒョン
わぁ…僕、子供の頃に
ママと来たことある!
ジョングク
ジョングク
俺も久しぶり
テヒョン
テヒョン
わぁ…懐かしいなぁ……




テヒョンがまだ小さい頃、母親と一緒に来た思い出の場所。

見上げた時の、母親の笑顔を思い出す。

ジョングク
ジョングク
前に……テテの子供の頃のアルバム見せてもらった時、ここの前で撮った写真あったから……

テヒョン
テヒョン
ぐぅちゃん……
ジョングク
ジョングク
テテと……一緒に来てみたかったんだ
テヒョン
テヒョン
ありがとう…連れて来てくれて





2人は手を繋いで、プラネタリウムに向かった。









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