PM5:30
ジョングクが働いてるビルの最寄り駅で待ち合わせをしたテヒョンは、人混みの中、改札を出た。
電車に乗るのも、誰かと待ち合わせをするのも久しぶりで、なんだかドキドキする。
キョロキョロと駅の前を見渡すと、こちらを見てにこやかに手を振っているジョングクが目に入った。
ジョングクはテヒョンと手を繋いで歩き出す。
行き交う人達と目が合って、テヒョンは少し下を向いた。
電車の中は、仕事帰りや学校帰りの人で溢れている。
ジョングクは、テヒョンが押しつぶされないようにスペースを作り、両腕で抱きしめるように守っていた。
目的の駅で降りると、ジョングクはまたテヒョンの手をぎゅっと握った。
ジョングクは自分のしていたマフラーをテヒョンに巻いて、繋いでいる手をポケットに入れた。
歩き出した2人の横を、冷たい風が通り過ぎる。
テヒョンは息を吐いてジョングクに見せた。
空に消えていく白い息を、儚げに見つめる綺麗な横顔。
テヒョンまで、消えてなくなりそうな寂しげな表情に、ジョングクは堪らず抱きしめた。
テヒョンは、ジョングクの背中に回した手に力を入れた。
ジョングクは更にぎゅっと抱きしめた。
しばらくテヒョンの背中を撫でてから、2人はまた歩きだした。
なんとなく、見覚えのある景色にテヒョンは立ち止まる。
テヒョンがまだ小さい頃、母親と一緒に来た思い出の場所。
見上げた時の、母親の笑顔を思い出す。
2人は手を繋いで、プラネタリウムに向かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。