目が覚めたとき、ベッドの横に紙袋が置いてあった。
中には着替えと、簡単な洗面用具。
それだけで、ここが“生活の場”になりつつあることを思い知らされる。
ドアの外に出ようとすると、すぐに低い電子音が鳴った。
ロック。
やっぱり、自由には動けない。
しばらくして、ドアが開いた。
ジャンハオが、何事もなかったように入ってくる。
“外”という言葉に、無意識に期待してしまった自分が悔しい。
そう言うと、ジャンハオは首をかしげた。
当たり前のように言われて、言葉が詰まる。
廊下は長く、白く、静かだった。
監視カメラが一定間隔でこちらを見下ろしている。
視線が何重にも絡みつく感覚。
即答だった。
ジャンハオは歩きながら、少しだけこちらを見る。
否定しない。
疑いも、警戒も、最初から隠していない。
足が止まる。
その言い方が、妙に静かで、正確で、残酷だった。
休憩スペースのような場所に着く。
大きな窓の向こうに、かすかに空が見えた。
青い。
ちゃんと、外は存在している。
思わず、声が漏れた。
ジャンハオはしばらく黙って、窓の外を見る。
きっぱりとした声。
感情がないからこそ、揺るがない。
彼は私に視線を戻す。
心臓が、強く鳴った。
一歩、距離が詰まる。
その目は、冷静で、優しくて、
でも――明らかに“個人的”だった。
私の言葉に、ジャンハオは否定しなかった。
その声は、医師のものなのに、
どこか恋人みたいに近かった。
彼は静かに続ける。
その瞬間、はっきり分かった。
この人にとっての“安全”は、
私の自由より、
彼の心の安定が優先されている。
――やさしい檻は、
もう、完全に閉じ始めていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。