第3話

第3話 「許可」
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2026/01/18 01:19 更新
目が覚めたとき、ベッドの横に紙袋が置いてあった。
中には着替えと、簡単な洗面用具。
それだけで、ここが“生活の場”になりつつあることを思い知らされる。

ドアの外に出ようとすると、すぐに低い電子音が鳴った。
ロック。
やっぱり、自由には動けない。

しばらくして、ドアが開いた。
ジャンハオが、何事もなかったように入ってくる。
ジャンハオ
ジャンハオ
今日は、少し歩こう
あなた
……外に?
ジャンハオ
ジャンハオ
施設内だけ
“外”という言葉に、無意識に期待してしまった自分が悔しい。
あなた
許可、もらってないですけど
そう言うと、ジャンハオは首をかしげた。
ジャンハオ
ジャンハオ
俺が出してる
当たり前のように言われて、言葉が詰まる。

廊下は長く、白く、静かだった。
監視カメラが一定間隔でこちらを見下ろしている。
視線が何重にも絡みつく感覚。
あなた
……見られてますよね
ジャンハオ
ジャンハオ
うん
即答だった。
ジャンハオ
ジャンハオ
君に何かあったら困るから
あなた
私が“何かする”前提なんですね
ジャンハオは歩きながら、少しだけこちらを見る。
ジャンハオ
ジャンハオ
するかもしれない
否定しない。
疑いも、警戒も、最初から隠していない。
あなた
信用してないなら、なんでこんな所歩かせるんですか
ジャンハオ
ジャンハオ
信用してるよ
足が止まる。
ジャンハオ
ジャンハオ
でもそれは、“判断を任せられる”って意味じゃない
その言い方が、妙に静かで、正確で、残酷だった。

休憩スペースのような場所に着く。
大きな窓の向こうに、かすかに空が見えた。
青い。
ちゃんと、外は存在している。
あなた
……出たい
思わず、声が漏れた。

ジャンハオはしばらく黙って、窓の外を見る。
ジャンハオ
ジャンハオ
出たい気持ちは、正常だよ
あなた
じゃあ――
ジャンハオ
ジャンハオ
でも、出さない
きっぱりとした声。
感情がないからこそ、揺るがない。
ジャンハオ
ジャンハオ
君はまだ、不安定だ
あなた
何を基準に?
彼は私に視線を戻す。
ジャンハオ
ジャンハオ
俺が、怖いと思うかどうか
心臓が、強く鳴った。
あなた
……私が、先生を?
ジャンハオ
ジャンハオ
違う
一歩、距離が詰まる。
ジャンハオ
ジャンハオ
俺が、君を失うのが
その目は、冷静で、優しくて、
でも――明らかに“個人的”だった。
ジャンハオ
ジャンハオ
だから、君の行動には全部、許可が必要になる
あなた
……檻じゃないですか
私の言葉に、ジャンハオは否定しなかった。
ジャンハオ
ジャンハオ
檻は、守るための構造だ
その声は、医師のものなのに、
どこか恋人みたいに近かった。
ジャンハオ
ジャンハオ
君は、まだ分かってない
彼は静かに続ける。
ジャンハオ
ジャンハオ
ここは、君が一番安全で、
俺が一番安心できる場所だ
その瞬間、はっきり分かった。

この人にとっての“安全”は、
私の自由より、
彼の心の安定が優先されている。

――やさしい檻は、
もう、完全に閉じ始めていた。

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