第12話

単刀直入に。
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2018/09/14 12:28
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「土屋、、、あ、ありがと笑」
電話口の向こうで有馬が笑っている。
さっきの言葉気にしてないようだが、少し暗い感じがした。返事はいつでもいいと返し、電話を切った。

次の日の朝、利根川先輩と一緒に登校した。
「先輩。俺、告りました。」
「おお!偉いねぇでどうだったの」
先輩はオネェ口調で話してくる。返事はまた今度でいいということを告げたことを教えたら
「まぁねぇ」
と返してきた。先輩はとても不思議な人だった。先輩と知り合ったのも理科室だった。落とし物を届けたことから始まった。やっぱりこの人が一番話しやすい。
そんなこんなで学校についた。

帰りの会が終わり、部活の支度をしていると植野がドアの向こうで手招きをしながら呼んでいる。
「有馬が放課後待っててだってさ」
そう告げて植野は去っていった。
有馬も《僕》も部活もあるのでその後ということなのであろう。《僕》はテニス部に所属していた。植野もそうだった。彼とはまあまあな付き合いでよく話したりする。今彼には彼女がいる。植野は相当な遊び屋でとっかえひっかえ彼女を変えている。有馬はそんな彼には振り向かないと思っているし現にこの間話したときは「んー無理かな笑」と話していた。たしかにあんなやつは俺が女でもありえない。でも、部活仲間では相当力をつけていた。ヘトヘトになって部活が終わり教室に向かっていった。途中で吹部が終わった中野に会ったが先帰ってもらうことにした。

放課後。先輩には先帰っててもらい教室で一人で待っていた。一体どんなことを言ってくるのだろうか。《僕》は振られてしまうのだろうか。
すると教室のドアが開いて有馬が来た。
少し暗い表情でつかつかと歩いてきた。《僕》は立ち上がり
「おお。おつかれ」
そう言って場を和ませようとした。
「ありがとう」
と有馬はいい窓の方に目線をやった。
夕焼けがきれいであった。《僕》はふいに
「今日は富士山がよくみえr...」
と言ったところで、それを遮るかのように有馬はこう言った。
「単刀直入に言っていい?」
多分返事なのだろう。呼び出されたってことは返事なんだろう。富士山の話をしようとしたがやめてゆっくり有馬も見つめ、頷いた。
「ごめんなさい。土屋とは仲良くしていたいから。」
振られた。分かっていたが少し悲しかった。
振られることはなんとなくわかっていたし。
2分ほどシーンとした空気が流れた。
これ以上いても仕方がない。
「そうか。ありがと」
《僕》はそう告げて教室をでた。
すると教室を出たところに菊池がいた。菊池とは同じクラスで同じ委員会に入っていた。
「おぉ。付き添いか。おつかれ様」
吐き出すように《僕》は去っていった。
菊池が教室にいる有馬に駆け寄っていったのはなんとなく足音でわかった。

帰り道。遠くに人影がある。近寄っていってみると先輩と中野が喋っていた。
「おお土屋!遅いなぁ」
中野が声をかけてきた。正直泣きそうだった。
「土屋くぅん。どうだったのぉ?」
利根川先輩はオネエ言葉で話しかけてきた。
笑いそうになったが泣きそうだった。
「えっあぁ振られたよ笑」
当たり前でしょ?のように《僕》は教えた。
「おうそうか」
「いやぁ土屋くんはかっこいいよ!頑張りましたねぇ」
中野と先輩が励ましてくれた。励まされたのか?そう思いながら《僕》は三人で帰っていった。

2月。あれからは有馬と話していない。違うクラスということもあるが、自分の中で距離ができてたのだろう。
「土屋ー 今日委員会だよ?」
同じ委員会の菊池がやってきた。
「穂乃果と話した?」
菊池はそう聞いてきた。多分僕たちの関係を気にしているとだろう。
「あんま、、、 ていうか委員会!」
あまり話したくない話題だったので無理に切り上げてしまった。

“まだ俺は有馬が好きだ”
心にはそのセリフが留まっていた。

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