第15話

期末テスト。
9
2018/09/24 05:10
「んでまぁ好きな女の子と同じクラスになったわけよ」
「おお!よかったですね!」
店員さんは胸をときめかして聞いてくれた。

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中2に進級してなんと有馬と同じクラスになった。彼女との間にはそんなに距離はなかったがあまり積極的に話そうとはしなかった。ちなみに、中野とも同じクラスになり特に困ったことはなかった。
「土屋ーおんなじクラスだね」
有馬が話しかけてきた。
「あぁうん。よろしく。」
菊池と付き合っているのであまり有馬のことは興味がなかっt...わけない。興味しかなかった。
「同じクラスになれてよかったよ」
少しうつむきながら《僕》はぼそぼそと言った
「えぇ??きこえなーーい」
明らかに聞こえているのに有馬はからかってきた。
「目も悪い上に耳も悪いのか?」
負けじと反論した。
「いや、土屋は頭悪いでしょ?理科以外は!」
「んだと?理科だけでもいいじゃんかよ!」
有馬の言うとおり《僕》は理科だけは学年で1.2位を争うほどの成績だった。
「俺に負けるときもあるけどねぇ」
中野が横から入ってきた。中野は分け隔てなく勉強中ができるのでいつも争っても総合では負けてしまう。
「中野は頭よすぎてキモい」
有馬が捨て台詞のように吐いた。
「あ?」
中野がちょいキレ気味で反抗した。
「まあまあー よろしくねー」
有馬はへらへらーとして去っていった。

「お前あいつのどこがいいんだ?」
中野が好奇な目で見てきた。
《僕》は離れてく有馬の背中を見ながら
「ああいうところだよ」
と言い放った。

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「えーその女の子のこと好きだけど付き合ってた人がいたんですかぁ?」
店員がびっくりした表情で見てきた。
「まあそうなるよね。」
「えぇなんか可哀想ですね。その付き合ってた子。」
少ししょんぼりしてうつむいた店員はこう言った。
「でも色々あって年上がってすぐ別れたんだよね」
《僕》はこの空気を打開するためにフォローをした。
「でね?その好きな子に近づける出来事があったんだよ」
「え!知りたいです!」

────
2年生秋。この日は期末テストの初日だった。
テストになると名前の順にならなければいけない。
「はい。じゃー今日からテストですので」
担任の先生がべらべら言いながら朝の会が終わった。
(俺の席はー、、、 有馬のとこ??)
席に行くと有馬が支度をしていた。
「落書きあったら消しといてね」
有馬はそう言って前の方に行った。
机には『私の席なんだーw』
と小さく書いてあった。残しておきたい部分だが消しゴムで勢い良く消した。有馬の方をちらっと見たらケラケラと笑っていた。
テストは2日間に渡って行われるので、最終日の明日は何か仕返しをしてやろうと思った。

2日目。
テストは午前中で午後から社会科見学のしおりの読み合わせがあったため朝からバタバタしていた。
「よし。最後は理科かー」
「今回は割と得意なところやから行けるだろ」
中野と《僕》はそんなことを言いながら問題を出し合っていた。
「はい。じゃー席ついてー」
試験官の古締先生が来た。
「土屋くん。期待してるよー」
古締先生は理科の先生で自由研究のときはお世話になった人だった。いつかこと人に担任になってほしいと思っていた。

テスト終了。後ろから渡ってくる答案用紙を前に送った。そしてカバンから封筒を取り出してそっと机の中に入れた。

午後。
「じゃあみんな視聴覚室に行ってー」
学級委員がみんなを誘導していた。有馬もその学級委員の一人だった。
「やべっしおり忘れた!中野!先行ってて」
と言い残し階段を駆け上がって教室に向かった。するとまだ誘導していた有馬とすれ違った。
「ねえ土屋!アレ、、」
「ん?あああ!あれねぇ!しおり忘れたから取りに行くだけだよ!」
アレの正体はわかっていたがスルーした。

────
「えぇ?なにしたんですか??その女の子に!」
《僕》は店員さんに登場人物の名前まで明かしていなかったのでやたらと詰め寄られた。
「俺からの告白なのかな?手紙で」
《僕》は返答した。
「なるほどねー」
半分興味なさげに頷く店員。
(興味あるのか?ないのか?この子は苦手そうだなぁ)
少し心に思った。
「まあその2.3日後にね、返事が来たんだよ」
「ど、どうだったんですか!?」
いきなり興味を示してきた店員は面白い人だ。
「さぁ?秘密です」
「ええええ!!!」
がっかりした店員はがっかりしながらも笑っていた。
「はははっ。結構いい恋でしたよ」
「なるほどー」
「だから。その女の子が好きだったサクラソウ。買っていいですか?」
「は、はい!!」
そうして有馬との思い出のサクラソウを買って帰路に着いた。

帰り道。
(まあ、あれはいい呼び出しだったなぁ)
あの日の手紙の返事を思い出す。
『ねえ土屋!あの、、ちょっときて!』
有馬から言われたセリフが頭をよぎる。
いい思い出だ。
「やべ泣けてきた。」
なぜだから自分の目から涙が出てきた。
(ああ会いたいなぁ。会えればだけど笑)
そう思いながら靴音をならした。

少し思い出しながら帰るとしよう。

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