「嫌いです」
《僕》はそうはっきり答えた。
「そ、そうですか、、」
彼女はあえて理由を聞かなかったのだろうか。聞けなかったのだろうか。少し手が止まったのでこれはまずいと話を切り替えた。
「いや、あの、、、嫌いってもそういう嫌いではないんで!!」
”そういう嫌い”ってなんだ?自分でもよくわからないが必死に弁解した。
「好きな人がいたんですよ。ひまわりのことを。すごくすごく大切にしてて。」
知らぬ間に《僕》は語り始めてしまった。
「わ、私もひまわり大好きです!最初は苦手だったんですけど徐々に、、、」
へらっとして彼女は《僕》に語りかけてくれた。
「でも俺の友達は嫌いでね笑。種の集合体?ってのが気持ち悪いって言っててさ」
丁度できたひまわりを片手に確かにと彼女は頷いた。
「あ、おいくらですか?」
「2500円です。ポイントカードはお作りしますか?」
「あ、はい。おねがいします。」
別にまた来る予定も今度花を買う予定も全く無かったがふた言返事のように《僕》はポイントカードを受け取った。
店を出ると少し薄暗くなっていた。
「やべっ。閉まっちゃうかな」
腕時計を見て慌てる。
そそくさと駅前のバス停へ向かって、ひまわりの花束が崩れないようにバスに乗りこんだ。
『次はすみれ園前。すみれ園前。』
バスのアナウンスが淡々と放送する。
さてご挨拶と、、、
《僕》は重い腰をゆっくりと上げた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。