そう。この駒には実体がないのだ。
天井を見上げるとそこに
プロジェクターのようなものは無かった。
よく目を凝らしてみれば無数に点がある。
その点から光を出して
色々な角度から見えるようにしていたんだろう。
ルンルンと彼がスキップしながらそこに立つ。
これで本来その角度から見えるはずの駒は
光が国木田さんで絶たれる為見えない。
ドキドキしながら回り込む。
見えた!見えた、、けど、、、
何これ!?
つまりこの駒最弱!?
見えたやつは歩みたいな動きだった。
ただ歩と違うのは、
敵が斜めにいる時のみ斜めに1マス動ける点と、
最初のスタート位置からのみ2マス前に動ける点。
それでも弱い事に変わりわない。
王冠みたいなの付いてるのにめっちゃ弱いじゃん!
詐欺だよ!
詰みな状態に変わりはない。
いや?
他のもっと頭の冴えた人達に良い駒が与えられたなら
そっちの方がいいでは無いか。
逆に私みたいなのがそんなに強い駒になったとしても
いい働きができる保証は無い。
ここは安心しておくべきだろう。
ふと館内放送のような音楽が流れた。
私らが最後だったのかよ!
はぁ!?
ピピー。
電子音が部屋に響いた。
チェスの駒は残ったままだが、
別の場所になにか浮かんだようだ。
3人揃って覗き込む。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。