瀬名君が軽く目を見張る。
え、なんかダメなことしただろうか。
彼は唇をクッと噛んでから、
諦めたように一息ついた。
いやぁ、ですって言うの慣れてないねぇ。
悔しそうに言われてもう可愛いったらない♡
あと他のメンバーに対しても、
本来呼び方違うのに下の名前で統一させられちゃって
違和感ありすぎな感じもまた良い♡
は?
いやおかしくない?
正直者は1人だけだよ。
何言ってるの?
よりによって私の大好きな司くんを省いたこと、
怒るよ?
ん?
待って。
やばい。
解ったかもしれない。
気まぐれは本当の事と反対の事を言う。
この状況、
司くんだけ正直者じゃないと言わんばかりだ。
矛盾が生じるので明らかに瀬名君は正直者じゃなく、
そして彼が言ったことも嘘だ。
本当の事と反対の事を言わなければいけない。
そういう事だ。
正直者は、司くんだ。
私はゆっくりと彼に近づいた。
この場で誰よりも真剣な顔をしていただろう。
アナウンスが流れた。
はあぁと息を吐いてその場に座り込む。
すると司くんが跪き、私に手を差し伸べた。
わあっと喜んで手を出そうとしてはっと気付く。
そう言えばこの人達実体ないんだっけ。
彼が私に笑いかけた。
まるでマジックの大技を見せるみたいな顔をして。
彼の真意が掴めないながらも手を重ねる。
しっかりと手の温もりを感じた。
彼が面食らったようにこちらを見る。
しっかり後で瀬名君除く4人に握手してもらった。
調子乗って司くんに抱きついた時は、
瀬名君から愛の一蹴を貰った。
これで少し満足して司くんに例の紙を見せてもらう。
何このクソ神みたいな行動範囲。
明らかに私向きじゃない。
今乗り越えた感凄いけどさ、
これからが本番だったら、、、
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。