思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
でも正直嬉しすぎる。
太宰さんは推しキャラなのだ。
太宰さんが私の背中を押すなら世界一周出来そうな程。
その太宰さんに今、後押しされている。
後押しされているけども。
武装探偵社に入ることは、
果たして世界一周より容易なのだろうか。
社長である福沢諭吉さんは「人上人不造」という異能力で、
部下である異能力者の異能をコントロール可能にする。
で、体が異能に耐えられるようになるという話だ。
これは、
私の武装探偵社が好きだという想いだけでは
荷が重すぎる。
今一度、1人でじっくり考えたかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
病院廊下にて
まぁ言ってはいない。
勝手に推理したのだろうと受け流した。
乱歩さんはちょくちょく私の心を読んでくるが。
あれはいいのだろうか。
まぁ置いておこう、きっと読んだのではなく推理だ。
乱歩さんが口をつぐむ。
分かっている。
其れは耐えられない程の苦痛だろう。
肉体的にも、
精神的にも。
この世界に来てから、
私は何も出来ていない。
おろか、迷惑ばかり掛けてしまっている。
これ以上、誰かに迷惑を掛ける事は出来なかった。
私は辛くてもいい。
誰か1人でも幸せにできるなら。
正直言って、まだ怖かった。
あの危険でも平和な世界を、私は壊さないだろうか。
でも、後悔はしない。
後悔するような未来にしない為にも頑張らなければ。
今気付いたのだが、
私は太宰さんに触れられていない。
いつから?
1人にしてくださいと頼んだ時、
もう離していたでは無いだろうか。
どうして暴走しないのだろう。
そもそもコントロールできる異能だったのか?
それでは先程の乱歩さんの説明と辻褄が合わない。
その代わり。
私の髪に、少し違和感を感じた。
見れば、白い布のようなもので私の髪が結んである。
…真逆。
もう最早なんで悲鳴を上げているのか分からない。
太宰さんの包帯を身につけている嬉しさ?
単純に変態への恐怖?
取り敢えず興奮状態もいい所である。
―病院に甲高い声が響き渡ったのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。