第22話

#20
2,527
2019/07/19 13:28
皆、無言だった。

皆、下を向いた。

皆、震えていた。



怒りの震えだった。
矛先ではない筈の私ですら縮こまる程のオーラが、
そこには漂っていた。


ただ、ただ歩いていた。




1度迷った森だけど、もう迷うことは無い。

あの古い館が見えてくる。


黙って頷き合った。


ガチャ。
ドアを開ける。
ギーッとドアの軋む音が高く響いた。



恐る恐る、私は声を上げる。
あなた
あなた
八雲さん
静まり返った館に私の声が響き渡る。


居ない訳は無い。

耳に全神経を集中させた。




コツ、コツ、コツ、




音がする。
足音だ。


後ろから?



皆一斉に後ろを向く。
???
紳士と淑女の嗜みへようこそ。
私はニック・ニークと申す者です。
あなた
あなた
(八雲じゃない!)
ニック・二ーク
ニック・二ーク
それでは…
パチン、と彼が指を鳴らす。
ニック・二ーク
ニック・二ーク
Checkmate






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あなたside


此処は何処だろう。


気付けば私は知らない場所に立っていた。


隣を見れば賢治くんと、、、、、


国木田さん。

あらやだ面子メンツ最悪。


やたらキラキラした目でこっち見てくるよ。

賢治くんは物珍しそうに周りを見ているし、

この状況に戸惑っているのはどうやら私だけらしい。





そこは真っ白な部屋だった。


壁、床共に真っ白で、
窓やドアすらないその部屋で、
「ソレ」は異彩を放っていた。

それは壁に向かって置いてあって、
私たちの身長より少し高い。

2mくらいか。


ソレとは、、、そう、

チェスの駒だ。


チェスはよく知らない。
なんか王冠ついてるやつ。

クイーンといったか?
知ってるのはそれだけ。


賢治くんは知るわけが無いし、
国木田さんは知っていたとしてそんな状態じゃない。


あなた
あなた
…どうするんだろう、これ
突然、やたら場違いなクラシックが流れた。
ニック・二ーク
ニック・二ーク
今より皆様にチェスをして頂きます。
ルールは大方将棋と同じですから、
ご存知の方が1人はいらっしゃると。
その駒の動きについては
部屋のどこかに隠されております故、
ご自分でお探し下さいませ。
此方からは以上です。
どうかご健闘お祈りしております。
あなた
あなた
ちょ、ちょっと!
将棋なら出来るけど決して上手いとは言えない。


しかも自分で探さなきゃなんて。

辺りを見渡す。

何も無い。

拙い。
未来は絶望的だ。

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