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第9話

逃げない者と逃げられない者
それからのことはよく覚えていない。


ただリヴァイ兵長のことが頭から離れなかった。

巨人たちに襲われていないか。

人類最強にこんなこと思うのも変かもしれない。

だけど、私はたくさんの人が喰われるのをこの目で見た。

流れる血を見た。

肉と骨があらわになったおばさんを見た。



見知った人が次々と喰われて行く。


目の前には赤一色で、私は諦めて流れていただけ。






リヴァイ兵長は、生きててよかったと私が言った時、目を細めて、そうか、と一言だけ言った。



何だか哀しそうな顔だった。








兵士
壁の付近に巨人はいません!
エルヴィン
エルヴィン
予定通りカラネス区へ帰還する
ハンジ
ハンジ
大丈夫かい?
あなた

あ、はいっ

兵団がカラネス区の外門に集まってきた。

兵士
えっ…あの子は…?
兵士
外に人がいたのか?
あなた

ぁ…

私のことだ…。

いたたまれなくなって、顔を伏せる。


ハンジ
ハンジ
君!
あなた

突然ハンジさんが私を呼んだ。


そして手を頭上で、クイッと前にやった。

何かを被るような動作。
あなた

あっ



私はハンジさんが床に敷いてくれた隊服を羽織って、フードを被った。

こういうことかな?と、ハンジさんを見る。

ハンジ
ハンジ
うん!大丈夫だからね

ハンジさんがニコリと笑いかけてくれた。


兵士
開門します!!
ゴゴゴゴゴ…!!





門がゆっくりと上がり、エルヴィンさんが進んで行く。

それに続き、私たちも壁の中へ入った。



あなた

はぁ…

来たことない街だけど、壁の中というだけで安心した。

それと同時に、以前のトロスト区が目の前にあるようで心が苦しかった。


民衆
朝方にトロスト区を出て、こっちに戻って来たんだな
民衆
なんでもトロスト区が襲撃されたらしい…
民衆
私たちは大丈夫なの?
民衆
ねぇ、あの子…隊服を被っているけど装備を身につけてないわ
あなた

私は顔を伏せた。

変に冷や汗が伝った。
民衆
本当だ…普通の子に見えるぞ
民衆
もしかしてトロスト区の子じゃない?
民衆
調査兵団はトロスト区に行ったのにこっちに帰ってきたのか?
民衆
兵士だというのに、のこのこと帰ってきたのか!
どうして?

どうしてそうなるの?




どうして民衆たちはこういう考えになるの?



どうして兵団は何も言わないの?




言われたままでいいの…?
民衆
人類を救ってこその兵士だろ!
リヴァイ兵長はトロスト区に応援に向かった。

トロスト区を見捨てたわけじゃない。


そう言えばいいのに…。




民衆
あの、うちの息子はどこでしょうか?
あなた

あ…

1人のおじさんが兵団の人達に問うて回っていた。



だけど、だれも返事はしなかった。










ああ、このおじさんの息子さんは、亡くなったんだ。




そうか…、エルヴィンさんは…エルヴィン団長は言えないんだ。




仲間を死なせているから。

帰ってこられなかった者がいるから。


自分たちは帰ってきてしまったから。





そして、リヴァイ兵長と数名だけをトロスト区に向かわせたのは、ここにいる兵士たちを少しでも死なせないため。

腕の確かなリヴァイ兵長を行かせることが、トロスト区を見捨ててない証拠。


エルヴィン団長は、玉砕覚悟でトロスト区に応援に向かうのでは無く、1人でも多くの兵士たちを守るために帰還したんだ。


決してそれは「逃げ」じゃない。

兵団のトップとしての、最善の判断。










だけど民衆は、そんなことまで考えられない。


ただ何もせずに帰ってきた、と思うだけなんだ。









私は民衆の言葉たちに耳を塞いだ。



私が兵士じゃないからできること。


現実に目をそらせる私だからできること。





エルヴィン団長の背中は、ずっと前を向いていた。

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姫乃
姫乃
受験を控えてますので、気分転換に書いています。 不定期ですがよろしくお願いします。
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