嫌だ。
嫌だよ。
この角を曲がれば教会がある。
そこに行けばみんながいる…!
「ーーー」
タッタッタッ…!
走り続けて、息が詰まる。
でも逃げなきゃ。
こっちにはまだ来てないはずだから。
私は角を曲がった。
私の足は、ぴたりと止まってしまった。
私が目指していた、教会にはたくさんの人がいた。
だけど、そこには大きな身体が2体、いた。
巨人たちは教会から何かを引きずり出した。
あれは街の靴屋のご主人だ。
巨人は主人の身体を握って不気味な笑い声をあげた。
教会の扉が開き、中から女性が走って出てきた。
しかし、その先には巨人がいて…。
ぐしゃり。
2人は巨人の餌となった。
教会の扉や窓から無数の手がのびてきて、悲鳴が響き渡る。
私はまたもと来た道を走って逃げた。
5年前の惨劇がもう一度…今度はこのトロスト区がシガンシナ区のように破壊された。
今、どういう状況なのか正直分からない。
だけど、巨人が入ってきたということはトロスト区の外門が破壊されたということ。
もしトロスト区の内門が破壊されたら…。
人類はウォールマリアどころかウォールローゼを捨てざるを得ない。
そうなれば、私たちは…。
そんなことを考えている場合じゃない。
人類の未来より、今私が置かれている状況の方が最悪だ。
先ほど教会へ向かって逃げてきた道には無数の巨人がいた。
そこを通って逃げることはできない。
ひとまず内門に近いところまで行かなきゃ。
私がいるここはトロスト区の中心に当たる。
ここから北部へと向かうのが妥当だ。
ドオオオオオオン!!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。