同時刻 地上2階 それが起こるまで...20分
イヴェラッタは異臭のする一階を任せ、二階へ向かう。
歩くたびに床板が鳴る。古い。とても。
階段を上がりきり、顔を上げる。複数ある重苦しい扉の中で、一つだけ異様なのもを見つけた。
華やかな可愛らしいカーテンで部屋が仕切られている。
ひらりとそこをくぐった。
子供の部屋のようだった。
明るく華やかに飾られた壁に、少し小さいベッド
収納は開いていたり、中身がこぼれ落ちていたりする。
床には血痕が残っている。
可愛らしい縫いぐるみとともに。
白と桃色を基調とした机の上に乗るまとめられていない紙。
見たこともない字で文が綴られている(そう、おそらく文なのだ)。
それを手に取る。
無意識に。
放り投げられた落書帳。
使われなくなったクレヨン。
窓のない部屋。
それらのどこかしらに違和感を覚える。
何故か。
まぁるい目。
後ろを振り向けば、無邪気なその瞳がイヴェラッタを見つめた。
真っ赤になった洋服が部屋の中を反射している
その少女はくすくすと笑った
カーテンに、青い蝶が一匹。
装飾品のように止まっている。
確かに息をして。
壁からすぅ、と透明な人の形をした霧のような生物が出てくる。
それも何体も。
気づけばイヴェラッタを囲むようにして、それらは静かに佇んでいた。
また、それらを拒むように、純潔の銃が何機も現れた。
―『白凰』
イヴェラッタの使用するレーテ。
白い銃器を創造することができる。その種は様々、当人がそれを知っていれば何でも可能である。銃弾も生成可能なので割と自由に撃つことができる。
しかし、使用のし過ぎは厳禁。行き過ぎると廃人と化してしまうだろう。
―辺りに銃声が響く。
古びた家のはずなのに、その衝撃に揺れた気配はなかった。
何発も。
壁には穴は開く。
当たり損ねた銃弾が転がる。
ただし。
その霧のような人間もまた、傷つくことはなかった。
なぜなら、彼らは霧だから。
先程まで玩具で遊ぶ子供のような顔だったのに。
もう今は、
その時だけは、
ひどく悲しく。
そして苦い顔だった。
その様子に釘付けになっていたとき、周りの「それら」がどこからか作り出した刃物で切りつけようとする。
ただし、それもまた霧。
イヴェラッタの肌が傷つくことはなかった。
そう、肌はね。
途端、猛烈な吐き気と前身を駆け巡る痛みが襲った。
立っていられずに、彼女はその場で倒れ込む。
それを、青い蝶はただ見つめている。
喋れない。
血を吐いて、またうめき声を出す。
今の彼女にはそれが精一杯だ。
諦めたような、絶望の顔を浮かべて、
ボロボロの涙を流した。
―その時、無機質な音が響いた。
『やぁ、素敵なお嬢さん!僕は君とあったことがないから、はじめましてだね』
『突然ですまないけれど、君が死にたがっているみたいだから上等の殺し屋を送っといたよ。』
『君の死に少しの敬愛と憎悪を。それじゃあね。』
それはイヴェラッタの耳元の通信機からなっているようだった。
それが鳴り終わるか否か、―
彼女の首を幼い少女が掻っ切った。
白髮の元殺し屋。
御伽噺的なスカートがふわりと浮く。
彼女こそが、上等の殺し屋である。
『多分使用者が死んだから、その毒も消えたんじゃないかな。』
またも同じ場所から流れる声。
『あったりぃ。情報屋さんだよ。
なんかちょっと危なそうだったから、君たちの機械に入らせてもらったってわけさ。
意外と簡単だったからもうちょっと強くしとくね!』
イヴェラッタは第31回のクソ長報告会で情報屋とは顔を合わせている
ついでにイヴェラッタが暴れ出し、相手を病院送りにさせた某騒動(病院送りで済んで良かったね。)をおさめたうちの一人。救急車を呼んだのもロイック・なんちゃらかんちゃらである。名前なげぇんだよな。
『君等のことは青い蝶が見てるよ。何匹もね。』
ちらりとカーテンに止まる蝶を見た。
まだ動いていない。
『街中にいるよ?青い蓑虫も、青いバッタも、青い蜘蛛も。見たことがないだけで。』
『うふふ、そんな事言われると照れるねぇ。
まぁ詳しいことは実際に君たちと会ってからにしよう。僕も用事があるしね!
君たちもまだやることがあるんだろ?』
『若干悪口で草。面白いね君たち。...え?なに、....それぐらい自分で....えぇ、いやまぁ、いいけど...
あ、それじゃ切るね。ばいばーい。』
イヴェラッタの新たな特技...環境に適応すること。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。