第29話

 2-10.エンドロール・ブレイク【竹】 後編
73
2026/04/07 13:28 更新



同時刻 地上2階 それが起こるまで...20分




イヴェラッタは異臭のする一階を任せ、二階へ向かう。
歩くたびに床板が鳴る。古い。とても。


階段を上がりきり、顔を上げる。複数ある重苦しい扉の中で、一つだけ異様なのもを見つけた。

イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
カーテン...

華やかな可愛らしいカーテンで部屋が仕切られている。

ひらりとそこをくぐった。
イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
...ここは、



子供の部屋のようだった。

明るく華やかに飾られた壁に、少し小さいベッド
収納は開いていたり、中身がこぼれ落ちていたりする。

床には血痕が残っている。

可愛らしい縫いぐるみとともに。

イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
こっちは...日記?ですかね


白と桃色を基調とした机の上に乗るまとめられていない紙。
見たこともない字で文が綴られている(そう、おそらく文なのだ)。

それを手に取る。
無意識に。



放り投げられた落書帳。

使われなくなったクレヨン。

窓のない部屋。


それらのどこかしらに違和感を覚える。

何故か。




ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
あら、人のお部屋に勝手に入っちゃいけないのよ。




まぁるい目。



後ろを振り向けば、無邪気なその瞳がイヴェラッタを見つめた。
真っ赤になった洋服が部屋の中を反射している

その少女はくすくすと笑った


ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
あのね、わたしお友達がいないの。
ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
だからお茶会を開いて、お話すればきっとだれかと仲良くなれると思ってた。



ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
...昔はね。




カーテンに、青い蝶が一匹。

装飾品のように止まっている。
確かに息をして。



ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
どうしてかしら。
ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
人ってこんなに醜い姿だって、思うのよ。



壁からすぅ、と透明な人の形をした霧のような生物が出てくる。
それも何体も。


気づけばイヴェラッタを囲むようにして、それらは静かに佇んでいた。


イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
!!、―『白凰』


また、それらを拒むように、純潔の銃が何機も現れた。



―『白凰』

イヴェラッタの使用するレーテ。
白い銃器を創造することができる。その種は様々、当人がそれを知っていれば何でも可能である。銃弾も生成可能なので割と自由に撃つことができる。
しかし、使用のし過ぎは厳禁。行き過ぎると廃人と化してしまうだろう。








―辺りに銃声が響く。
古びた家のはずなのに、その衝撃に揺れた気配はなかった。
何発も。
壁には穴は開く。
当たり損ねた銃弾が転がる。







ただし。

その霧のような人間もまた、傷つくことはなかった。


なぜなら、彼らは霧だから。

ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
申し訳ないけど。
ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
わたし死にたくないのよ。



先程まで玩具で遊ぶ子供のような顔だったのに。

もう今は、
その時だけは、




ひどく悲しく。

そして苦い顔だった。

ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
いいや、死んじゃいたいのよ



その様子に釘付けになっていたとき、周りの「それら」がどこからか作り出した刃物で切りつけようとする。
ただし、それもまた霧。
イヴェラッタの肌が傷つくことはなかった。


そう、肌はね。


イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
ゔぅッ....!?



途端、猛烈な吐き気と前身を駆け巡る痛みが襲った。

立っていられずに、彼女はその場で倒れ込む。



それを、青い蝶はただ見つめている。


ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
....ね、私の話を聞いてほしいの。
ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
わがままかも知れないわ。でもね、
 
ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
一つくらいいじゃない。







ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
すてきなお嬢さん。
ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
あなたは奴隷になったことがある?

イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
ッは"...ぅ、ぅ゙...



喋れない。

血を吐いて、またうめき声を出す。
今の彼女にはそれが精一杯だ。

ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
冷たくて、寒いところで、何回も売られてね
ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
もらえるものは3日に一回の汚い水と一切れぱんだけ。
ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
狭い箱に何日も詰められて、ようやく開いたと思ったら鞭で叩かれてこう言われるのよ。

ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
「その無駄な両手足をもいで売ろうか」って。




ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
あなた、スラム出身なのね。誰かから聞いたわ。


ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
あなたが幸せになれた理由って、なに?
なぜわたしは幸せになれなかったの。
ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
いっそのこと、ここで死んだら幸せなのかしら?


諦めたような、絶望の顔を浮かべて、

ボロボロの涙を流した。



―その時、無機質な音が響いた。



『やぁ、素敵なお嬢さん!僕は君とあったことがないから、はじめましてだね』


『突然ですまないけれど、君が死にたがっているみたいだから上等の殺し屋を送っといたよ。』

『君の死に少しの敬愛と憎悪を。それじゃあね。』



それはイヴェラッタの耳元の通信機からなっているようだった。


ふぇるー・えげすた
ふぇるー・えげすた
....誰?




それが鳴り終わるか否か、―





彼女の首を幼い少女が掻っ切った。

白髮の元殺し屋。


御伽噺的メルヘンチックなスカートがふわりと浮く。
雨谷 ヰ仆
雨谷 ヰ仆
....大丈夫?


彼女こそが、上等の殺し屋である。



イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
っ、毒が...

『多分使用者が死んだから、その毒も消えたんじゃないかな。』




またも同じ場所から流れる声。
イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
....この声は、情報屋の
雨谷 ヰ仆
雨谷 ヰ仆
そうなの....?
『あったりぃ。情報屋さんロイックだよ。
 なんかちょっと危なそうだったから、君たちの機械に入らせてもらったってわけさ。
 意外と簡単だったからもうちょっと強くしとくね!』
イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
相変わらずですね....



イヴェラッタは第31回のクソ長報告会「ヴェルレーヌの閑話休題」で情報屋とは顔を合わせている
ついでにイヴェラッタが暴れ出し、相手を病院送りにさせた某騒動(病院送りで済んで良かったね。)をおさめたうちの一人。救急車を呼んだのもロイック・なんちゃらかんちゃらである。名前なげぇんだよな。
雨谷 ヰ仆
雨谷 ヰ仆
...なんで、危なそうってわかったの...?


『君等のことは青い蝶が見てるよ。何匹もね。』


イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
青い、蝶。


ちらりとカーテンに止まる蝶を見た。
まだ動いていない。


『街中にいるよ?青い蓑虫みのむしも、青いバッタも、青い蜘蛛も。見たことがないだけで。』
雨谷 ヰ仆
雨谷 ヰ仆
きれい。

『うふふ、そんな事言われると照れるねぇ。
 まぁ詳しいことは実際に君たちと会ってからにしよう。僕も用事があるしね!

 君たちもまだやることがあるんだろ?』
イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
...そうでしたね。私達も、まだやることがある
雨谷 ヰ仆
雨谷 ヰ仆
地下の援護...いる...?
イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
いや、多分大丈夫でしょう。やる気と根性とレーテで構成されたみたいな人たちですし。はい。
雨谷 ヰ仆
雨谷 ヰ仆
....な、...なるほど....?


『若干悪口で草。面白いね君たち。...え?なに、....それぐらい自分で....えぇ、いやまぁ、いいけど...
 あ、それじゃ切るね。ばいばーい。』


雨谷 ヰ仆
雨谷 ヰ仆
...嵐、みたいな人
イヴェラッタ・ジュラメント
イヴェラッタ・ジュラメント
今始まったことじゃありませんよ


イヴェラッタの新たな特技...環境に適応すること。

プリ小説オーディオドラマ