俺に見せた形の違う2つの花をぐしゃぐしゃに握るリュウ。
バラバラになった花びらが俺の顔にかけられる。
リュウは愛おしそうに強く抱きしめ、耳元で囁いてきた。
俺は死ぬよりこいつのものになる方が怖い。
手を伸ばしてきたリュウにまた何かされると思うて目を閉じると、パッツンの前髪を避けられ、キスをされた。
急に襲われる眠気に抵抗して下唇を噛むも、全然効かへん。
リュウは優しく微笑みながらトントンと背中を叩いてきよる。
言うとることは甘いのに、やっとることはえげつない。
力を振り絞って言うと、悪い笑みを浮かべるリュウ。
ここは地獄やと力なく言うて、俺は眠りに落ちていった。
<完>
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!