私、西條もも。ここは...家
ゆっちゃんがなんでぼくって言うのか、本当は少し分かってる。
最近見た小説に、見た目は男で心は女っていう登場人物がいた。
その人がわたしって自分で言ってて笑われてた。
ゆっちゃんは同性愛について聞いてきた。
きっとゆっちゃんも、本当は男でいたいのかもしれない。
なんであの時さっちゃんにうんって言っちゃったのか。
そんなことばっかり考えてしまう。
土曜日の昼、カーテンと窓の隙間から見える暖かい光も、
私にとっては悪魔の手のように見えてしまった。
ごめんなんて、どんなに思ったって届かない。
さっちゃんや他の人は、そんなことで悩まなくていい、って
思うかもしれない。でも、
ゆっちゃんのあの暗い目は正常ではなかった。
私は同じ事をしたかもしれない。ゆっちゃんを傷付けた人と。
暗いゆっちゃんも小学校の頃は明るくて元気だったらしい。それを変えた、トラウマを蘇らせた。それが事実ならば、もうゆっちゃんと友達ではいられない。
仮説だけど本当ならって考えると、心のどこかで そんなわけない、ちがってたらいいな、とか考えている私。
大好きな"ともだち"を傷付けたかもしれないのにね
バカみたい私
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。