2年に進級して、早いもので2週間が経とうとしてる。
相変わらず俺の周りはいつもやかましいヤツらで溢れとって、コース別授業のおかげで他クラスにも友達がたくさん出来た。
可もなく不可もなく。
そんな俺の日常に、やかましいやつがまた1人現れた。
……上手く状況を飲み込めないまま、クラスメイトの石井の説教を聞く羽目になってもうた俺は、頭の中で石井の話を整理する。
つまり、どういうこっちゃ?
……なんや、何しても怒られるやんけ。
あまりの剣幕に怖じ気付く俺を横目に、相変わらず鬼の形相の石井は捨て台詞を吐いて去っていった。
……なんやってん。
怖すぎやろ、絶対俺の寿命5年くらい縮んだわ。
***
次の授業は、気付けば石井に言われたことばっか思い出して、頭の中は控えめに笑う吉岡でいっぱいやった。
……なんや、吉岡の周りうろちょろしてる男て。誰やねん。
一度気になってしまえば最後。
モヤモヤした気持ちは消えることを知らへん。
俺は、授業が終わったと同時に理系コースの教室へと走ってた。
***
理系コースの教室の中、見つけた吉岡はいつも通り。なんも変わった様子がない。
思わず名前を呼びかけて、でもすぐにグッと呑み込んだ。
吉岡を馴れ馴れしく名前で呼んで、無駄に至近距離から話す男に胃もたれした時みたいな不快感が込み上げてくる。
うっわ、なんやこれ……最悪や。
せやけど、それ以上に気になるのは吉岡の返事。
……まさか、OKせんよな?
って、なんでこんな不安になっとんねん、俺。
”また今度……”と申し訳なさそうに断る吉岡に、ホッとした気持ちと、モヤモヤが交差する。
バッサリ断ればええのに、また今度ってなんやねん。アホ。
転校初日、迷子になって不安そうやった吉岡を思い出す。
俺がおらんとだめやった吉岡はどこいってもうたん?……そう思ったら、胸が締め付けられた。
***
あー。
もう、よう分からへん。
教室まで戻る間も、頭の中はさっきの西とかいう男と話す吉岡ばかり思い出して。
……いい加減、頭おかしなるわ。
そんな俺の肩に後ろから腕を回して、くるっと勢いよく方向転換させたんは、コースが同じで最近仲良くなった松島やった。
……まさか、俺が知らんかっただけで、吉岡ってめっちゃ人気あんのか?
転校生ってだけで知名度もあるやろうし、控え目で笑顔が可愛くて、優しくててええ子やし……って。
うわなんやこれ、俺、吉岡のこと好きなんか!?
早口に告げて、逃げるように教室へ駆け込む。
松島には悪いけど、もう敵増やすわけにはいかなくなってん。
教室の窓際で、石井たちと楽しそうに笑う吉岡を見つけてギュッと心臓が切なく軋んだ。
まさかやで。
吉岡に、俺だけ見てて欲しいなんて思う日が来るとは思わへんかった───。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。