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第10話

いつだって視線の先にいるのは。
三好 遥
三好 遥
茉優ちゃんは西くんのこと
どう思てるん?
石井 美菜子
石井 美菜子
まさか、好きとか
言わんといてな?
吉岡 茉優
吉岡 茉優
どうしたの、2人とも……
そんな怖い顔して
石井 美菜子
石井 美菜子
最近、西のやつここぞとばっかりに
茉優ちゃんを自分のにしようと
してるんやもん!ハラハラするわ!
三好 遥
三好 遥
茉優ちゃんは哲太くんが好きやんなあ?
昼休み、私を両側から囲んだ美菜子ちゃんと遥ちゃん。

話題はなぜか西くんのこと……かと思えば、今度は田中くんのことへと切り替わってしまった。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
……田中くんのことは好きだけど
石井 美菜子
石井 美菜子
やけど!?
吉岡 茉優
吉岡 茉優
田中くんて、人気者だし
きっと私のことなんて……
ただの方向音痴でどんくさい転校生くらいにしか思ってないと思う。

その証拠に、コースが離れたって寂しい顔ひとつしないし。なんなら、コースの中に新しい友達まで作って毎日を楽しんでさえいる。

……田中くんは日常から私がいなくなるくらい、困らないんだろうな。
三好 遥
三好 遥
もうここまで来ると
見てる側が焦れったいわ
石井 美菜子
石井 美菜子
……あかん、
ウチなんか頭いたなってきた
ネガティブ全開の私に、遥ちゃんと美菜子ちゃんはそれぞれ頭を抱えてしまった。

応援するって言ってくれてたのに、全く実りそうにない恋でごめん。

***

放課後の生徒玄関。
目の前には、哀しげに微笑む西くんがいる。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
と、いうわけなので
あの……本当にごめんなさい!
西 雅也
西 雅也
まさか告らせてすらもらえんと
失恋するなんて思てへんかった
じわり、じわり。
申し訳なさの波が押し寄せてくる。

だけど、美菜子ちゃんや遥ちゃんと話した後から、自惚れてるわけじゃないけれど、もし西くんが本当に私を好きでいてくれるなら、気持ちには応えられないって素直に言おうって気持ちが強くなって……。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
本当にごめ、
西 雅也
西 雅也
謝らんでええよ。
諦めへんから
吉岡 茉優
吉岡 茉優
……え?
西 雅也
西 雅也
今はまだ茉優ちゃんの中に
俺がおらへんでも……
この先の俺の頑張り次第では
まだまだ有り得るやん?
吉岡 茉優
吉岡 茉優
……西くん
西 雅也
西 雅也
……ってのは、冗談。
茉優ちゃんの気持ちよう分かった
西 雅也
西 雅也
せやけどちょっとムカつくなぁ。
茉優ちゃんにこんなに想われてるのに
気付かへんなんてどこのアホなん?
分かりづらい冗談を投下した後、インテリメガネ男子の西くんか黒い笑顔を覗かせるから、背筋に一瞬冷たい何かを感じた。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
……それは、内緒
西 雅也
西 雅也
俺には聞く権利
あると思うねんけどなぁ
ジリッと詰め寄られて、よろけた体を下駄箱に支えられて、そのまま西くんが私を囲むように両側に手をついた。

……壁、ドン。
西 雅也
西 雅也
もしそのアホに泣かされたら
俺んとこおいで
吉岡 茉優
吉岡 茉優
に……西くん、近っ
どんどん迫ってくる西くんに、慌てて顔を俯かせれば、ほぼ同時に腕を掴まれてグイと力いっぱい引き寄せられた。
田中 哲太
田中 哲太
近いんじゃ、アホ!
コイツ返してもらうで!
吉岡 茉優
吉岡 茉優
……た、田中くん!?

***

手を繋いだままずんずん進む田中くんの後ろを、何とか必死に追いかけて、辿り着いたのは人気のない別館の廊下。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
田中くん……あの、
田中 哲太
田中 哲太
大体、隙ありすぎやねん!
あんな距離に他の男寄せるな
吉岡 茉優
吉岡 茉優
っ、
田中 哲太
田中 哲太
……嫌やねん!
吉岡が他と仲良くしてるのが
吉岡 茉優
吉岡 茉優
田中くん……
そ、それって
”ヤキモチ?”
言いかけて、やめたのは自分に自信がないから。

見たことないくらい不機嫌な田中くんに、なんて言おう……って今も脳内はあたふたしていて、そんな私に追い打ちをかけるように田中くんは口を開いた。
田中 哲太
田中 哲太
道に迷ってる吉岡見つけた時から
きっと、ずっと惹かれてたんや
吉岡 茉優
吉岡 茉優
……!!
田中 哲太
田中 哲太
俺、吉岡が好きや。
気付けば吉岡のことばっか考えてる
吉岡 茉優
吉岡 茉優
私も、田中くんのことばっかり
考えて、目で追っちゃうんだ……
田中 哲太
田中 哲太
……!
まじで!?
吉岡 茉優
吉岡 茉優
……両想いって、
思ってもいいかな?
───ギュッ

突然、強く抱きしめられて、田中くんの体温に溶けてしまいそう。
田中 哲太
田中 哲太
この街に、俺に……
出逢ってくれてありがとうな
お父さんの転勤が決まらなかったら。
転勤先がこの街じゃなかったら。
転校先がこの学校じゃなかったら。

そんな言い出したらキリがない”もし”を数えて、田中くんとの出逢いを”運命”と呼んでみたくなった。

人の温かさ、優しさにたくさん触れて。
田中くんに出逢い、恋を知り。
内気だった私を、みんなが変えてくれた。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
私に、出逢ってくれてありがとう。
……田中くんのことが大好きです
田中 哲太
田中 哲太
どうしよう……
可愛すぎて直視出来へん
───ここは、大阪府泉大津市。

毛布みたいにあったかくて、優しいこの街を
私はこれからもっともっと好きになっていく。

そんな予感がした。