第5話

はじめてのお誘い。
田中くんに泉大津市を案内してもらった2日後の月曜日。

朝、私が教室に着くなり、先に来ていた田中くんが……
田中 哲太
田中 哲太
吉岡、金曜の放課後
迷子になっとったんやで!
なんて、大声でクラスのみんなに暴露し始めるから、内心とってもヒヤヒヤしてしまった。

───だけど。
石井 美菜子
石井 美菜子
えええ!
先帰ってごめんな茉優ちゃん!
三好 遥
三好 遥
待っとったら良かったなぁ……
大丈夫やった??
それがきっかけで、クラスの女子に取り囲まれることになった私は、おかげで驚くほど早くクラスに馴染めてしまった。

***

今思えばあれは、友達作りが苦手な私のために田中くんが気を利かせてくれたんだろうな。

そう思うと、田中くんには出会った日から、本当に感謝しかない。

クラスのムードメーカーで、気さくで優しくて、実は周りを良く見ていて……。
誰に対しても平等に接することが出来る非の打ち所がない好青年。

終業式を終えた今、訪れた春休みに浮かれる教室の中心で、田中くんの周りをクラスメイトたちが取り囲むように集っている。
三好 遥
三好 遥
誰のこと見てるん?
吉岡 茉優
吉岡 茉優
……!?
石井 美菜子
石井 美菜子
誰のこと見とったんやろな?
吉岡 茉優
吉岡 茉優
ふ、2人とも……
おどかさないでよ!
三好 遥
三好 遥
別におどかそうって
思たわけちゃうよ?
石井 美菜子
石井 美菜子
そうそう!茉優ちゃんが誰かさんに
見惚れてるから急に声かけられて
びっくりしたんやろ?
クスクスと笑いながら、完全に私をからかっている2人とは、今じゃすっかり仲良くなった。

優しくておっとりした性格の三好 遥みよし はるかちゃんと明るくていつも元気な石井 美菜子いしい みなこちゃん。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
もう〜!
からかわないで
自分でも知らないうちに、田中くんのことを目で追ってたなんて……。しかも、美菜子ちゃんと遥ちゃんにバレたし、すごい恥ずかしい。
石井 美菜子
石井 美菜子
で、ぶっちゃけどうなん?
吉岡 茉優
吉岡 茉優
ど、どうって……?
石井 美菜子
石井 美菜子
哲太のこと、
好きになってもうた?
吉岡 茉優
吉岡 茉優
えっ……!
三好 遥
三好 遥
あはは、茉優ちゃん真っ赤〜!
分かりやすいなぁ
吉岡 茉優
吉岡 茉優
ち、違うよ!?
違う違う!そんなんじゃ……
石井 美菜子
石井 美菜子
ふぅ〜ん?
応援したげるのに、なぁ?
三好 遥
三好 遥
うんうん。
哲太くんと茉優ちゃん
お似合いやと思うしなぁ
ニヤニヤと笑いながら、私の顔を覗き込んで来る2人に耐えられず両手で顔を覆う。

周りから見たら、私って田中くんのこと好きなように見えるのかな?確かに嫌いじゃないし、田中くんのこと目で追っちゃうのも事実だけど……。

そんなことを考えながら、覆っていた手をどけた私の視線は、また無意識的に田中くんへ……。


───バチッ
吉岡 茉優
吉岡 茉優
!!
田中 哲太
田中 哲太
……ん?
吉岡、どうかした?
吉岡 茉優
吉岡 茉優
な、なんでもない!!
ぶつかってしまった視線を慌てて逸らせば、ドキドキと心なしか心臓がうるさい。

ええ、どうしよう。
もしかして私、田中くんのこと意識しちゃってるのかな?
石井 美菜子
石井 美菜子
それはそうと!茉優ちゃん
今日うちに遊びに来えへん?
吉岡 茉優
吉岡 茉優
え?
三好 遥
三好 遥
うちも行くし、
茉優ちゃんも一緒に行こう
吉岡 茉優
吉岡 茉優
私も行っていいの?
石井 美菜子
石井 美菜子
当たり前やん!うちら友達やろ?
本当はもっと早く誘いたかってんけど
引っ越してきたばっかやし
バタバタしてるかな〜って思って
美菜子ちゃんの気持ちが嬉しくて、つい涙腺が緩む。じわりと滲んだ涙に気づかれないように、私は2人に精一杯の笑顔を向けた。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
行く!すごい嬉しい……!
誘ってくれてありがとう
石井 美菜子
石井 美菜子
良かった〜!
ほな、うちまで案内するし
一緒に帰ろう
三好 遥
三好 遥
楽しみやね〜!
東京の学校での事とか
色々聞かせてや〜!
吉岡 茉優
吉岡 茉優
うん!
明日からついに春休み。

クラスメイトはみんな面白くて優しいし、私を友達と呼んでくれる子たちが出来た。

この街で過ごす私の毎日は、きっとこれからどんどん色鮮やかになっていく───。