第3話

ワクワクを分け合うと。
昨日、帰り道で迷子になったこと。
たまたま通りかかった田中くんに助けてもらったこと。
それから、田中くんに街を案内してもらう約束をしたこと。

家に帰ってお母さんに話したら、お母さんの田中くんへの好感度が果てしなく上がってしまった。

結果、今朝家を出る前に、私の格好を念入りにチェックしたお母さんは、”これならバッチリ!”なんて満足そうに笑った。

もう……。デートじゃないってのに。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
泉大津駅の東側すぐにある
……おづみん像の前って
田中くんとの待ち合わせ場所、泉大津駅までやって来た私は、田中くんの言っていた”おづみん”を探してキョロキョロと周りを見渡した。

実は、昨日田中くんに言われるまで”おづみん”を知らなくて、田中くんに”泉大津市のゆるキャラやで!”と教えてもらった。

気になって家に帰ってからネットで調べたら、思った以上に可愛らしいヒツジの”羊精”だった。

ちなみにおづみんは泉大津市の毛布工場で生まれたらしい。もしかして田中くんちだったりして……なーんて。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
あ……!あれかな?
思ったより大きいかも
田中 哲太
田中 哲太
吉岡〜!
こっちこっち!
おづみんのブロンズ像に気を取られていた私は、近くに手を振る田中くんを見つけて、自転車を押しながら駆け寄った。

どうやら今日は、自転車で色んな場所に行くらしい。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
おはよう、田中くん!
田中 哲太
田中 哲太
おはよう!
今日は迷子にならんかったんや?
吉岡 茉優
吉岡 茉優
うっ……意地悪言わないでよ
こうして、私の泉大津市巡りは、昨日の学ラン姿とはまた少し違った雰囲気の田中くんと、雲ひとつない青空に恵まれて幕を開けた。

***
田中 哲太
田中 哲太
ここは、
泉大津市立 織編館おりあむかん
田中 哲太
田中 哲太
織物やったり編物を通じて
泉大津市の伝統産業とか、歴史や
文化にふれることができる施設やねん
田中くんがまず連れてきてくれたのは、駅からすぐの場所にあるテクスピア大阪という建物の中の泉大津市立織編館。

入口では、可愛いおづみんのパネルがお出迎えしてくれた。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
わぁ〜!あれ、すごい大きいね。
もしかして、これで毛布を織るの?
田中 哲太
田中 哲太
あれは木製のジャカード織機つって
かなり昔に使われてたらしいで
吉岡 茉優
吉岡 茉優
へぇ〜
田中くん、さすが泉大津市民!
詳しいんだね〜
田中 哲太
田中 哲太
まぁな!……って、言いたいとこやけど
実は、吉岡のために昨日の夜、
色々と調べて予習して来てん
吉岡 茉優
吉岡 茉優
え?私のために?
田中 哲太
田中 哲太
せっかく引っ越して来てくれたんやし
この街のこと、好きになって欲しいねん
”当たり前”とでも言いたげに、話す田中くんがキラキラして見える。

田中くんが一生懸命話してくれるのが嬉しくて、気付けば夢中になっている自分がいた。

内気な私だけど、田中くんと一緒だと少しだけそれが薄れるような気がしてくる。
やっぱり、田中くんは不思議な人だ。
田中 哲太
田中 哲太
ちなみに、
2階には体験学習室ってのがあって
毎月色んな手織り体験ができるらしいで
田中 哲太
田中 哲太
あと、ここおづみんグッズも
売ってんねん!見に行く?
手織り体験ってどんなことするんだろう。

……おづみんグッズも興味あるな。
この街に引っ越して来た記念に何か一つ、欲しいかも。
吉岡 茉優
吉岡 茉優
うん、行きたい!
知らない街。知りたい街。
これからここが、私の街。
田中 哲太
田中 哲太
なんか、案内役の俺の方が
ワクワクして来た!
今日はまだまだ連れていきたいとこ
めっちゃあんねん
吉岡 茉優
吉岡 茉優
楽しみだなぁ〜!
ワクワクのシェアだね
たくさんの初めてに出会う、今この瞬間のワクワクを、田中くんと分け合っているんだと思うと嬉しかった。