第5話
分からない=会長
*あなたside*
る「……………あなた。」
『……ハイ、なんでしょうか会長様』
私は今、腕を組み仁王立ちをしている激おこ会長の前で絶賛正座なうです。
何故こうなったかと言うと、生徒会で出す資料で何個も誤字脱字があったからだ。
最初はため息をつかれてやり直しと言われたのだが、手直ししてもう1回会長の元へ出してみるとまだ直っていないものがあったらしい。
そして今に至る、と。
『あのう…………平和に行きませんか。』
る「あなたが失敗するのが悪いんですよ?」
『べ、別に、したくて失敗s』
る「黙って」
したくて失敗したわけじゃない、そう言おうとすると人差し指で唇を抑えられる。
なにこれ!?!?なんか恥ずかしいんだけど!!!
そもそもそんな怒らなくてもいいじゃん!!泣くよ??いいの???
る「何?泣いちゃう?」
『絶対泣いてやんない!!』
というか、私がミスする前から機嫌が悪かったような気がする。
もしかして八つ当たりですか?そうなんですか??
る「なんで僕がこんな怒ってるか分かる?」
『私のミスだけじゃないと思います!八つ当たりはよくな「全部あなたのせいなんだけど。」
『…………は?』
会長に言われた言葉の意味が分からなくて思考がショートする。
全部私のせいって、私何か会長にした?
別に、今日は腹黒会長休んでないかなあなんて祈ってたりした事がバレるわけが無いし…。
いやバレたら私が死ぬんだけど。
『えっと……何一つ身に覚えがないんですけど、』
恐る恐る口にしてみると、はあっとため息ひとつ。
そして、
『いッ────!?』
急に手首を掴まれ、壁へと押しつけられた。
壁ドンというより壁ドゴンの方が正しい気がするが、そんなことはどうでもいい。
『か、かいちょ、顔ちか………』
目の前にはドアップの顔面国宝級の顔が。
黄色い琥珀色の瞳でじっと見つめられればあっという間に顔が赤くなる。
むりしんどい。
る「………ころちゃんに同じ事されても、そんな反応するんですか」
『………え?』
なんでころん?
今のこの場でどうしてころんが出てくるのかが理解出来ず固まる。
そんな事はお構い無しにグッと手首に力を入れられ、慌てて言葉を探した。
正直、こんな事してくるのは会長だけだし上手く想像できないのが事実だけど…………
『多分、しない、です。……ただの幼なじみだし。』
そう、ただの幼なじみ。それ以上でもそれ以下でもない。
特別な感情を抱いた事がある訳じゃない。
だからといって会長に特別な感情を抱いているかはまだ分かんないけど………。
る「じゃあ、僕だけですか?そんな可愛い反応するの。」
『かっ、かわ………!?!?』
かわいい、その言葉にさらに顔が熱くなる。
私のわかり易すぎる反応に会長はふっと笑うと、私の手首を抑えているのとは逆の手で頬から首へとなぞっていく。
その行為が恥ずかしくて擽ったくて、思わず身をよじった。
る「あなた、かわい」
『…………ッ』
抵抗しようにも出来なくて、クッと会長を睨みつける。
会長が何考えているのか本当に分からない。
分からなさすぎて私の事好きなんじゃね?なんて勘違いしてしまいそう。
そんな事、天と地がひっくりかえっても有り得ないんだけどさ…。
る「ねえあなた」
『………なんですか、』
る「離して欲しかったらさ、僕にキスして?」
『むりです』
る「どうしてですか?」
どうしてって、そんなの決まっている。
『………恥ずかしい、から』
目を逸らしながらそう言うと、今まで聞いてきた中で過去最高の長さを誇る会長のため息が出てきた。
チラッと会長の方を見上げると、先程まで鋭くこちらを見つめていた姿はどこへ行ったのやら、俯いたまんま動かなくなっていた。
…会長の耳の先がほんのり赤いのに気が付き、なんとも言えない気持ちになりまた私も目を逸らす。
すると
る「あなた、」
そう優しい声が上から降ってきた。
なんですか、そう言いながら顔を上げた時
唇に花びらが落ちるような、そんな感覚がした。
『……え』
呆然として会長を見ると、顔を赤くしながら何かに耐えるような表情を浮かべていた。
る「………今日はこれで我慢してあげます。」
そそくさと部屋から出ていく会長の背中を横目にズルズルと膝から崩れ落ちる。
胸の音が信じられないくらいうるさい。
周りに人がいれば聞こえてしまいそうなくらいに。
『会長に………き、きす、された………?』
なんで、どうして、
分からない、知りたくない。
─あなたはさ、るぅとくんの事好きなの?─
そんなころんの言葉が蘇る。
好きなわけない、なんて、言い切れなくなってしまった。
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り「あれ、るぅとくんなんか顔赤くない?」
る「…………自分の理性はこんなにも脆いのかって痛感したよ……」
り「???」