第2話

観客と演奏者
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2021/03/11 03:24
戸田
先輩 。 なんで、学校って行かないとダメなんですか?
戸田
学校に行けば怒られるだけですよね
深瀬 類
それは、お前の態度の問題だろ
戸田
まぁ 、 そうですけど …


夕暮れの日差しが強い今の時間帯。
生徒たちは部活動や下校のため、賑わいでいる。


私はもう使われていない南校舎の音楽室に来ていた。その部屋には、1つのピアノと1人の男の人。男の人は、1つ年上の先輩で、名前を 深瀬 類 ふかせるい という。


私が先輩と初めて会ったのは唯の偶然だった。

この校舎で時間を潰していた。教室で唯 椅子に座って時間が過ぎていくのを待っていた。やる事も無く唯、ひたすらに 。


クラスが嫌い。
学校が嫌い。

それでも、学校に行くのは 義務教育であるため。

そんな時に出会ったのが、先輩の奏でるピアノだった。

なんとも言えない浮遊感を味わった。まだ、10数年しか生きていないけど、˹ 幸せ ˼ だと感じさせられる音だった。

最初は聴くだけで満足だった。でも、後に弾いている人が気になった。

── どんな人が弾いているのか

その好奇心だけが勝ち、恐る恐る 音のする方に向かった。

眼が奪われた その言葉が綺麗に当てはまるのだとわかった。

それ程までにとても上手い演奏。けど、フィニッシュに向かう最後の最後の本当に最後の1音。 それを、1つずらして弾いてしまったのか、鈍く締りの無い音が響き渡った。

私は、勢い余って笑ってしまった。それは、盛大に。
戸田
あっ、 …ふっ  ……す、 すみません…
深瀬 類
………


笑いを堪えながらも謝る観客とそれを無言で見つめる演奏者。


それが、私と先輩の初めての出会いだった。

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