中学の卒業式。
式典が終わると先輩は何時もの校舎に来ていた。此処で会うのも今日で最後。
まさかの一致な答えに私は先輩の方をみて笑ってしまった。この時間が楽しくて、あっという間に時間が過ぎてしまう。
遠回しの約束。元い一方的な告白。
冗談で言ったつもりだったのだろうか、先輩は呆れを通り越して何かを悟った顔をしていた。私はそんな先輩の顔を横に微笑み乍、卒業の祝いを述べた。
ピアノをみて、私は唯一弾ける曲を思い出した。
ピアノに近付き、蓋を開け、手に掛ける。
椅子を引き、深く腰を落とす。
初心者の私が初めて先輩の前でピアノを弾いた。まだ、たどたどしい音色だが、˹ 先輩 ありがとう ˼ の思い と ˹ 先輩 大好き ˼ の思いを込めて 弾いた。
フィニッシュはちゃんと弾けたが、めちゃくちゃ間違えた。
あの時と逆の立場になった気がした。
初めて出会ったあの日。フィニッシュの音を外した先輩に笑って謝る私。 その光景が脳裏に焼き付いた。
あの時から私の歯車はゆっくり ゆっくり回っていたのだと思う。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。