第513話

一緒に走ろう、俺が走るから 青橙
232
2022/05/22 14:17
結構前に書こうか迷っていたりょうてつ小説です
簡単に説明すると、事故で歩くのもままならない走れなくなったてっちゃんとそんなてつやの走りたいという夢を叶えてあげたいりょうくんの話...
りょう+てつっぽいですが、りょうてつです
まだ続くはず....書きたい部分があるから






てつや「りょうって足速いなー」
階段に座って足を伸ばしているてつやがペンとボードを持ってりょうに話しかけた
りょうはその階段の近くの水道で水を出して、水を被って体温を下げている
りょう「そうか?」
キュッ、と蛇口を捻って水を止めたりょうがてつやの方を見て肯定しかねた
ポタポタと水で濡れた顔や髪から流れる水滴を着ていたユニフォームの裾や腕で拭うりょう
生憎りょうはタオルを持っていなかった
てつやもタオルでも渡してやろうかと思ったが、手元に無くて心の中でりょうに謝罪をする
多分りょうのことだから、タオル持ってなくてごめん、と謝ったところで気にするなとりょうが言うのをてつやは分かりきっていた
てつや「一番速いぞ?部内でな!」
りょう「自分では分からないよ」
てつやの隣に腰を下ろして、りょうも階段に座り込んだ
てつや「.......羨ましいよ」
りょう「てつや.......」
消え入るようなてつやの言葉と声は聞き取れないほど
隣にいたりょうは、かろうじて聞き取れたようなものだ
てつや「俺もりょうみたいに速く走りたかったなぁ」
自分の足を見下ろし、悲しそうな目をして、てつやはそんなことを言った
てつや「いや、速く走らなくても良いや...走れればそれで....俺は良かったのに」
りょう「............そう、だよな」
てつやがそう言うのも理由がある
てつやは小さい頃、交通事故に巻き込まれて重体になり、意識不明に陥って...一時は危険な状態までにいった
だが、日が経つにつれ山場も越え...数日もすればてつやは目を覚まし、一命は取り留める
だけど、一命は取り留めたとて...重体を負ったのは事実だった
事故の後遺症で、てつやは足を事故に合う前のように、思うように動かせなくなってしまったのだ
リハビリのお陰で歩けるようにはなったが、それだけだった
速く歩くことも、ましてや走ることも出来なくなってしまっていた
歩くことも上手く出来ない、だから学校に来るのも一苦労だとぼやいていた
自転車も漕げない、ほんと嫌になるわ~、と笑ってりょうに話していた
でもりょうは見逃さなかった
その時のてつやの顔が泣きそうな顔をしていて、取り繕った笑顔だったことを
一番辛いのはてつやのはずなのに、てつやは笑い話で自分の足が動かないことを話していたのだ
みんなに心配かけないためか、はたまた自分を鼓舞するためか...それはてつやにしか分からなかった
隣で話を聞いていたりょうは、同じくてつやの足を見下ろした
普通に見えた、普通ではない
走ることが出来ない、俺と違って....
何でてつやが陸上部に入っているのか聞いてみたことがある
てつや『俺、走るのが好きだったんだけど、もう走ることが出来ないけど、みんなの走るところ見て満足してるんだよ...』
羨ましくて仕方なくて、自分だって走りたいくせに、てつやは眺めるだけで満足だと言っていたのだ
部員ではなく、マネージャーとして部員をサポートしているてつや
気配りが出来ていて、他の女マネージャーよりかテキパキと動いて仕事をこなす
りょうもそんなてつやをスゴいと思っていたし、尊敬していた
出来ないところは、出来るところでカバーする...てつやは足が動かないならと前向きにすることで誤魔化していたのかもしれない
てつや『俺、りょうの走る姿好きだぜ!速くて、フォームもしっかりしてて...惹き付けられる!!わーっ!なって、応援したくなる!!う、うーん...難しいなぁ、何て言えば良いんだろう.....とにかくカッコいい!!』
りょうに詰め寄る勢いでてつやは意気揚々と言った
そのてつやの言葉を忘れたことはない
自分だって走りたくて仕方ないのに...何でお前は俺のことをそんなにまで過大評価をしてくれるんだろう....
りょう「てつやは、.....もう一度走りたい?」
絶対に決まった答えが返ってくると分かっているのに、聞いてしまった
聞いたあとでバカなことを...と後悔をした
でもてつやは、...りょうの返答に目を見開いて、驚きつつも....精一杯の笑顔でりょうに答えた
てつや「走りたい...りょうと一緒に....」
またてつやは悲しそうな目をしていた、あのときと一緒だ
てつやの答えを聞いて...りょうも険しい表情になり、沈黙の時間がしばらく続いたのだった....

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