第514話

一緒に走ろう、俺が走るから2
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2022/06/05 14:13
今回は走れなくなってしまったてっちゃんが陸上部に入ったきっかけの話です...
りょうてつ要素は少なめですけど、りょうてつです
オチの持っていき方を見失いかけている...










もう走らなくったって良いと言えば嘘になる
走るのは好きだ、子供のときから無我夢中であっちこっち走り回って、...母親を困らせていたっけ?
休みの日に連れてきた公園に着くなり、繋いでいた母の手から離れて好きなだけ走った
ただひたすら走った、...走るのが好きだから
砂場にも滑り台にも、公園にいる同じ年の子達と一緒に遊ぶこともしなかったのだ
走れればそれで良かったから、もう二度と走れないという事実を知ったときは子供ながら絶望して...目の前が真っ白になった
それほど走るのが好きだった、走っている間は嫌なことも何もかも忘れられる
風が気持ち良い、足が一歩また一歩と出てくる
理由を聞かれたら難しくて、悩むだろう
でもただ一言言えるのは....走るのが好きだというその事実だけだ





てつや「また速くなってるなぁ....」
前回のタイムと見比べて見たら、絶対タイムが縮まって速くなっている
さすがとしか言いようがない
アイツは陸上部の中で五本の指に入るくらいの強さだ
二年だというのに、三年よりも速いし...レギュラー入り確定だ
着実に速くなるアイツのタイムに、てつやすらも嬉しく感じていた
りょう「嬉しそうじゃん...」
てつや「っ、何だよりょう驚かすなよ...」
てつやの手元のバインダーに挟んでいた記録の紙を覗き込んでいるのはりょうだ
さっきまで向こうで走っていたのに、いつの間に隣に来たんだ?
りょう「どうだった?」
てつや「えー...何で俺に聞くんだよ、タイム測ってたの俺じゃねぇんだけど....」
りょう「てつやから見て、どうだった?」
タイムを測っていた女子マネから聞けば早いものの
てつや「速くなってた、すげぇよりょう!」
りょう「ありがとう、てつやのお陰だな」
てつや「俺?俺、何もしてないけど.....」
りょう「.......わざわざ、辛いのに俺の練習に付き合ってくれたお陰だよ、ありがとう....」
てつや「.....それ、は」
グッと言葉が詰まる
大会前とか、休日とか...時間がお互いに合えば、集まって近くの広場で走る練習をしていた
りょうが走って、てつやがそれを見てアドバイスしたり、応援したり....
本当のことを言えば、....走れなくなったその日から、走っている人や走れる人を見ると羨ましくなったりして...嫌で堪らなかった
ましてや陸上部に入るなんて...本来であれば部活には入らず、陸上とは無縁に過ごしたかったのだ
走りたいのに走れない....それを再認識させられそうで嫌だった
たまたまだ、下校してるとき...陸上部の練習が目に入って、すぐ反らそうとしたとき
てつやの目に入ってきたのは青色のユニフォームを着用したスラッとしたスタイルの男だ
顔も整っていて、男のてつやでさえカッコいいと思った
やたらと女子の生徒が放課後に残って、陸上部を見ているなと思ったら彼を見ていたのか...と悟る
てつやは彼を見つめた
そして、彼が走り出したとき...衝撃が走った気がした
てつや『すっげぇ......』
あんなに綺麗なフォームで走る人、見たことない
あんなにスピード落とさないで走る人、見たことない
あんなに一緒に走る人を抜いて走る人、見たことない
あんなに、速く走る人.....見たことない
胸がざわついた、うるさいくらい心臓が跳ねている
落ち着いていられない、思わず見入って立ち尽くす
初めての感覚だ、いや違う...感じたことのある感覚
あれはそうだ、....初めて俺が走ることに対して興味を持ち始めたとき
走ることの楽しさを知った、あのときと一緒だ!!!!
あのまま彼の走る姿を追い続け、ゴールした彼が息を整えている
てつや『目が、離せないなぁ...』
彼を見続けていると、ふと彼がこちらを見た気がした
目が合った、ほんの一瞬だけど...彼と目があった
てつや『あ、.....///』
何だか変だ、一瞬だけ目があっただけなのに変に心臓がうるさい....顔が熱い
恥ずかしくなってすぐ顔を反らして俺は歩いてその場を立ち去った
家に帰っててつやはベッドに倒れ込む
忘れられない...あの彼の走る様を...目に焼き付けてある
羨ましいとか...そんな気持ちよりも、スゴいとか、カッコいいとか...そんな気持ちが渦巻いていた
こんなこと初めてだ、あんなに走る人を見るのが嫌だったのに....何でだろう
忘れられない、...見ていたい、彼の走る姿を、近くで....見てみたい
決めた...
てつやはベッドから起き上がると、鞄の中から一枚の紙を取り出して、机に転がるシャーペンで署名のところに自分の名前を書いた
一応貰っていた、部活の入部希望の紙だ
今まで鞄の奥底にくしゃくしゃで眠っていた紙だ
提出なんて、しなかったろうな...こんな時期に提出するやつもいない
てつや『.....せめて、』
希望を、少しだけ見出だした...俺に、




チャンスをくれませんか......?








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