第2話

4話
232
2021/07/10 05:05
YOU
YOU
今日の放課後
暇な人!
てーあげて
なおきり
なおきり
ポピー
どぬく
どぬく
はぁーい!
しゃぱぱ
しゃぱぱ
うぃー?
たっつん
たっつん
うぃー!
のあ
のあ
はーい!
ゆあん
ゆあん
はぉー!
うり
うり
空いてねぇぇぇ
るな
るな
天才るなも、
空いて無いですぅぅぅぅ!
えと
えと
遊びたかったぁー。
ごめんね。
シバァ
シバァ
(╹ー╹)遊べないわ。
ヒロ
ヒロ
遊べないよぉぉぉぉ。
もふ
もふ
たっつんは、
一緒にテストの復習するんでしょ!
たっつん
たっつん
あ、
さとみ
さとみ
行けるよぉ〜
ころん
ころん
いける!
ジェル
ジェル
俺となーくんは、
編集www
ななもり
ななもり
行きたかったぁぁだ。
りいぬ
りいぬ
いける!
るぅと
るぅと
いける!
香乃愛
香乃愛
いけなぁーいー
海莉愛
海莉愛
くそがぁぁぁぁぁ
行きたかったぁぁぁぁあま。
神愛
神愛
あま?
水夏
水夏
神愛とうち
居残り弁当www
YOU
YOU
なんじゃそりゃwww
YOU
YOU
えと
行ける人が、
なおきりくん
どぬくくん
じゃぱぱくん
たっつんくん
あ、違ういけないんだった。
なおきりくん、どぬくくん、しゃぱぱくん、のあちゃん、ゆあんくん、さとみくん、ころんくん、りいぬくん、るぅとくんね?
すとぷり
すとぷり
全員の
からぴち
からぴち
名前
全員
全員
『YOU以外』
覚えてる!?!?
YOU
YOU
ん?
当然だろ!
友達の名前覚えんやつがいるか!
香乃愛
香乃愛
シンクロ受けるンバ
海莉愛
海莉愛
(╹◡╹)ニコニコ
YOU
YOU
(╹◡╹)こわこわ
水夏
水夏
(╹◡╹)あひゃあひゃ
神愛
神愛
え、なにそれxwww
香乃愛
香乃愛
いやそこは
のってくださいよ!
神愛
神愛
(╹◡╹)うひひひひw
海莉愛
海莉愛
(°▽°)
香乃愛
香乃愛
(°▽°)
水夏
水夏
(°▽°)
YOU
YOU
(°▽°)
神愛
神愛
え?え?何その顔
リアクションしにくいんですけどxywww
YOU
YOU
わからんww
海莉愛
海莉愛
(°▽°)
この顔好きかもww
香乃愛
香乃愛

それなww
水夏
水夏
結構可愛くね?
神愛
神愛
あーでもわかるわぁー。
水夏
水夏
だろ?
YOU
YOU
うんうん。
海莉愛
海莉愛
わかるわぁー。
香乃愛
香乃愛
なんかわかんないけど可愛いんだよなぁ。
神愛
神愛
も一回、
やろーぜ?
神愛
神愛
(゚∀゚)
香乃愛
香乃愛
(゚∀゚)
海莉愛
海莉愛
(゚∀゚)
YOU
YOU
(゚∀゚)
水夏
水夏
(゚∀゚)
YOU
YOU
なんか
変わってね?
海莉愛
海莉愛
気のせいだな。
神愛
神愛
気のせいか、
水夏
水夏
(°▽°)
多分こうだべ
香乃愛
香乃愛
あ、そっちダァー
女子組
女子組
wwwww
全員
全員
《女子組以外》
俺達/私達
空気??!
YOU
YOU
あ、
海莉愛
海莉愛
いや、空気かも知んないけど、
空気じゃないと思うよ!!!!
神愛
神愛
でも
空気だと、触らないから、
水夏
水夏
いや、
空気は、
今触ってるよ!
香乃愛
香乃愛
はい?
水夏
水夏
だって
この空間にも、
二酸化炭素(?)と、
酸素あるんでしょ?
空気中に
、、、、、、
あれ?
自分何言ってるかわからんわw
神愛
神愛
ま、他に
空気でわ無いことは
確かだからね!
YOU
YOU
よし。
茶番は、終わりにして、
どこ行く?

私旅館行きテェ!
百物語やろーぜ!
すとぷり
すとぷり
やりたい!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
うん。やっぱり全員行かせるわ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
からぴち
からぴち
《どぬく、なおきり以外》
やるぅーーーーー!
どぬく
どぬく
えぇぇぇ
ホラーじゃん!
怖いのやだぉぁぁぉぁ
なおきり
なおきり
しゃぁぁぁぁ
絶対行く!!!
女子組
女子組
ふぅぅぅぅ!、!!!!
百物語やろーぜぇぇぇぇぇぇぇ
YOU
YOU
いぇぇぇぇぇぇぇぇい!
^ - ^モブリンゴ
^ - ^モブリンゴ
うるさいぞー。
全員
全員
さーせんした!
^ - ^モブリンゴ
^ - ^モブリンゴ
仲良いなzwww
次から、
気おつけろよ
全員
全員
うぃーす!
ーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
_よるー_ここから、みんな小声でする!_
YOU
YOU
しゃあ、百物語やろーぜ!
ころん
ころん
寒い。、。
YOU
YOU
_馬鹿_
おいで?
一緒に布団はいろ?
ころん
ころん
////はい?
  ちょ、それわ。
YOU
YOU
_馬鹿_
ほら、おいで?
ころん
ころん
は、はい。////
YOU
YOU
ころんくん
寝たら?
ころん
ころん
なんで?
YOU
YOU

赤いじゃん!
ころん
ころん
(╹ー╹)赤くないよ、、
YOU
YOU
香乃愛
香乃愛
はいはい。
そこー、
イチャイチャしないの!
YOU
YOU
ふぇ?
ころん
ころん
し、してねぇーよ!
香乃愛
香乃愛
wwはいはい。
ころん
ころん
(╹ー╹💢)
YOU
YOU
しゃあ、
電気消すよ?
全員
全員
《YOU以外》
うん、!、
ーーーーー
YOU
YOU
じゃあ、
私から、
右周りね?!
全員
全員
《YOU以外》
は、はい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一人ずつ言ったら、
めんどくさいんで、飛ばして最後の一個にしますわ、


怖い話し嫌いな人は、
見ない方が、身のためですよ?(え?こいつ何言ってんの?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
YOU
YOU
はなすね?

私達の家は、夫が35歳で30年ローンを組んで買ったものです。
まだローンの完済まで5年あり、夫は働けるからと夜間警備のアルバイトに月の半分ほど出ています。
子供も独立して、私は家で1人暇をもてあます日々でした。

そんなある夜、トイレに起きた時にふと廊下から庭を見ると、怪しく紫色に光る人魂のようなものが見えました。
何だろうとじっと見ていると、ふっとその光は消えました。
近所の明かりが反射したか見間違いだろうと思った私は、寝室に戻ります。

恐らくその怪しい光のせいでしょうか、怖い夢をみました。
私の寝室を取り囲むように、見たこともない老人達がうじゃうじゃと立っていたのです。
私は朝7時に帰宅した夫へそのことを話しました。
夫は夜勤で疲れていることもあってか、軽く聞き流して風呂に行ってしまいました。
まぁ他人の夢の話ですから、そのような反応になる事は当然ではあります。

ところが別の夜の事です。
ふと庭に目をやると、人魂どころか私の夢に出てきたような老人達が薄明かりの下で、ゆっくりと歩き回っているではありませんか。

私はもうパニックになって、すぐに警察へ不法侵入者がいることを通報しました。
通報した後に再び庭を見張る度胸はなかったので、電話でずっと警察の人と話をして誰かが到着するのを待ちます。
5分ほどで最寄りの交番のおまわりさん駆けつけてくれましたが…その時には人っ子1人も居ませんでした。

翌朝、夫はそのことを聞いて
「見間違いで夜中に近所迷惑なことをするんじゃない!」
と私を叱ります。
私は納得できませんでしたが謝りました。
冷静に考えれば証拠も無いですし、異常な光景だったので見間違えか何かと考えるのが自然だと思ったからです。

それから、私は夫が出勤中の夜が怖くなってしまいました。
夫には
「できればアルバイトを辞めて。」
「せめて日勤にしてほしい。」
と懇願しましたが、相手にはしてくれません。

そしてまた1人の夜、避けるようにしていた窓から恐る恐る庭を覗くと、やはり見知らぬ人達が生気の抜けたダラダラとした足取りで庭を歩き回っていたのです。
更にその中の1人が私に気づいたらしく、こちらへ視線を送るような動きをしそうになり、私は慌てて身を隠しました。
これは私の所へ迫ってくるのも時間の問題だと思いました。

耐えられなくなった私は電話で夫を呼びました。
最初は相手にしてくれませんでしたが、私の様子が明らかにおかしいと伝わったようで、仕事中でしたが15分ほどで仕事着のままで戻ってくれました。
「庭には誰もいないから安心しろ。」
と言うので、私は夫と一緒に庭を見に行きました。
確かに誰もいません。
ところがその後、2人で驚愕しました。

夫が懐中電灯で庭を照らすと、綺麗に撫でられていた枯山水の小石に、複数の足跡のようなものが残されていたのです。

私はゾッとしました。
やはり幻覚じゃない。本当にいたんだ。
そう思いました。
夫も神妙な顔をしています。

そこで私は思い出したかのように、気になっていた事を夫へ聞きました。
「枯山水用の石を安く手に入れたといっていたけど、それはどこから手に入れたのか。」
夫の答えはとても恐ろしいものでした。

最近は墓を捨てる人が多いらしく、廃棄に困ったその墓石を砕いて園芸用に使っていたというのです。
墓石というと御影石のような黒いものを連想しますが、それ以外の石材で作られた墓も多いそうなのです。
私は
「なんでそんな罰当たりなものを庭にまいたの?」
と夫に詰め寄りました。
夫も流石に不安になってきたのか、きちんと寺で供養してから廃棄してもらうよう、造園業の人にお願いすると約束してくれました。

数日後、庭の砂利は全て回収され、お寺の和尚さんにお経をあげて供養してもらった後、廃棄してもらいました。
それ以降、私の家で人魂や怪しい人達が出てくることはありません。

ですが私は、今でも庭を見るとその時の光景が思い出されて、不安な夜を過ごしています。
どぬく
どぬく
こわぁー、
香乃愛
香乃愛
次私ね?

これは、私が大学4年生の時の話です。
当時化学系の学部に所属していた私は、卒業論文発表まで3ヶ月を切っており、研究室へ寝泊まりしながら実験を行う日々を送っていました。

その日は私以外の学生はおらず、研究室には1人だけ。
夜の11時を過ぎる頃には、もはや建物に私だけという状況になりました。
ふと時計を見ると、12時半ごろ。
ひたすら実験室で化学反応の実験をしては、フラスコに試薬を添加していました。
研究室の間取りなのですが、パソコンなどで事務作業を行う部屋と、ドラマで見るような実験室が壁を挟み隣同士になっています。
壁にはドアが1つあるだけです。
各部屋には外の廊下へと繋がるドアが付いていますが、これが古いせいなのか開け閉めすると「ギィー」と大きな音がするため、どちらの部屋に居ても誰かが開けたなと分かります。

突然「ギィー」という音が聞こえました。

私はてっきり「先輩か誰かが来たのかな」と思い、さほど気にはしませんでした。
というのも私も含め理系学生は夜型人間が多く、夜12時を過ぎてから来る大学院生の先輩もいるくらいです。
とりあえず挨拶はしておくかと思ってパソコンの部屋を覗いたものの、誰もおらずシーンと静まり返っています。
「あれ?」とは思ったのですが、最近ずっと徹夜続きだったので聞き間違いかな、くらいにしか思いませんでした。

それから1時間くらい経ったでしょうか。
「ギィー」
音がまた聞こえました。

今度こそ誰か来たのかと部屋を覗いても、やはり誰もいません。
2回も異変が起きたので、さすがに私も怖くなり実験を辞めて帰ろうかと考えます。
しかしここで辞めたらまた最初からということもあり、それでは締め切りに間に合いません。
気分転換でもしようかと、自分のパソコンで動画の実況を見て気を紛らわせながら作業を進めていきます。

3時前になって実験結果の確認と片付けを行い、うまくいった安堵感に加えて恐怖心も薄れてきました。
あと少しで朝を迎えるのなら、このまま研究室で仮眠した方が良いなと思った私は、ソファーでブランケットを被り目を閉じます。

どのくらい寝ていたのか分かりませんが、私は「キィキィ」という音で目が覚めました。
何だと思い周囲を確認すると、真っ暗な部屋で作業着のようなものを着ている男が座っていました。
状況が呑み込めない私は、緊張で硬直します。
するとその男は立ち上がり、ドアを開け廊下へ出ていきました。

私は勇気を振り絞りって
「オイッ、待たんかい!」
と叫んで後を追いますが、男の姿はどこにもありません。
廊下も真っ暗だったので、明かりを点けるべくスイッチを押そうと階段の方に向かって歩きます。
すると廊下の奥で何か動く者が見え、目をこらすとあの男が立っていました。

私がギョッとすると同時でした。
その男は私の方に向かって歩いてきます。
いや、歩くというより滑るような感じで、スーっと結構速いスピードで迫ってくるではありませんか。

私は逆方向に向かって走り、普段は使わない非常階段を駆け下りてアパートに逃げ帰ると布団にくるまって震えていました。

朝になって9時頃に研究室へ戻ると、何事も無くいつもの日常でした。
私は先輩に夜中にあったことを話すと、そのような男を目撃した人は他にもいて、先輩の先輩にあたる方も分析機器の前に立っている作業着の男を見たのだそうです。

その後、私はどれだけ忙しくても夜の9時前、他の学生がいる間に帰宅することにしました。
卒業式のコンパで教授に男の話をしたところ、大学は元々炭鉱があった場所に建てており、そこで亡くなった方なのではないか、と言っていました。
水夏
水夏
私いくね?

私は子供の頃から霊が見えます。
ですが幽霊が見えるといっても未だに半信半疑で、生きている人と区別がつかない時もあるし、あれが本当に幽霊かと問われると、はっきり見えたとは言いにくいときもあります。
これはそんな私が体験した話で、名称はすべて仮名です。

高校2年の夏に、同じ部活の由美が
「明日から夏休みだけど、予定ある?」
と聞いてきました。
特に予定もない私は、由美に誘われるまま家へ泊まりに行くことにしました。
「あのさぁ、うち幽霊がいるみたいなんだけど…見てくれない?」
由美は、私が見えていると理解している唯一の友達です。由美の家は、街から1時間近く離れた山間部にあり、平家の落人伝説がある集落の1つです。
私は1人で午後のバスに乗って、曲がりくねった狭い山道をずんずん登っていきます。
由美は毎日こんな道をスクールバスで通学していた事を、初めて知りました。

家はお寺の隣にあり、お寺と家の間には墓地がありました。
由美の家はお寺なの?と質問すると、違うといいます。
ご両親や由美の妹達と明るいうちに夕食を食べ、広い屋敷を案内してもらいました。

かなり大きく立派な瓦屋根の家で、複数の座敷がある1階には、その外側を囲むように廻廊がありました。
「広いだけ、掃除が大変なの。」
天井は高く、丸太の柱が梁として使われていました。今となっては希少な造りの家なのかもしれません。
特に気味の悪い場所は無い気がしましたが、お風呂場とトイレの辺りは足がすくむ気がしました。
古い家ではよくあることで、水回りに先祖の霊がとどまっていることがあります。

家を見た後は由美と一緒に風呂へ入り、上がると家族はいませんでした。
夜は霊が出るので、2階で過ごすというのです。
2階には6畳ほどの小部屋があり、4人家族が集まって寝ているとのことです。
本来平家だったものを父親が無理に増築したとのことでした。

ぎっしり敷き詰められた布団に息苦しさを感じた私は
「下の部屋でもいいけど…。」
と提案しました。
由美は「一緒ならいい」といって、布団を下の仏間に敷きました。

さて寝る準備は整いましたが、まだ夜7時です。
ポットとお茶と茶菓子を母親が用意してくれ、2人布団を並べて電気を点けたまま先輩のこと、同級生のこと、今後の進路などいつまでも話は止みません。
そのうち由美が寝息を立て始めました。
由美が寝ると急に心細くなった私は、グロウランプは点けたままにして布団に潜ります。

山の中だからなのか、夏だというのにやけに涼しい。
風の音なのかサワサワと微かな音が聞こえ、寝ようとしているのに神経が研ぎ澄まされます。
更にはトイレに行きたくなってしまいました。

由美を起こそうとした時でした。
ザザザ…
廊下から何かを引くような物音がします。
明らかな異音に、私は大きな声を出してしまいました。
「由美、起きて!」
由美はハッとしたようにすぐに目を開けました。
「…トイレ。」

由美が電気を点け、襖を開けて真っ暗な廊下に出ます。
さっきの音はしません。
すぐ先がトイレで、私は由美を怖がらせないように「ごめん、ごめん。」と言いながらトイレに駆け込みました。
ほっとして出ると「待っててね」と由美が入れ替わりでトイレに入ります。

ザザ…
また引きずる音が聞こえます。
「由美、まだ?」
たまらなくなって、入ったばかりの由美を急かしました。
もの音はもうそこの角まで来ています。

そうだ!音の正体を見ておかなきゃ!

不意にやるべき事を思い出した私は、怖さを押し殺して柱の影に身を隠し、音が近づくのを待ちました。
ざんばら髪の鎧甲冑姿の武士が、何かを引きずって歩いています。
よく目を凝らすと、仰向けに倒れた着物姿の老女の髪を掴み引きずっているのです。

バンッ!と勢いよく由美がドアを開けて出てきて、私の腕を引っ張ったまま座敷に駆けこみました。
「見たの?!」
私は頷きます。血の気が引いているのが自分でもわかりました。
音はずっと鳴り続けていて、私の頭の中にはあの光景がフラッシュバックします。
私達はそのまま寝る事なく、息を潜めながら朝が来るのを待ちました。

「やっぱりいたのか。あなた霊は祓えるのかい?」
朝食をごちそうになりながら父親から聞かれるも、私はただ見えることがあるだけだと伝えます。
「幽霊相手じゃなにをすればいいのか…。」
「隣の寺に相談して下さい。」
隣が寺なら好都合だし、私の出番ではなかったのではと思いました。

昼過ぎに住職がやって来ました。
「実は、うちの寺はこの山田家(由美の名字)の墓守で、いつの頃からか集落の寺になったんだと伝えられている。」
私が昨晩見た光景を話すると、その後宗派の本山に呼びかけて、大きな法要をして村にそぐわないような石碑も建てたそうです。
住職の話では、霊が騒がしい時は災害の前触れと考えるらしく、思い切って法要をしたのだと言います。
由美の家では、それから霊が出なくなりました。

「幽霊になってずっと引きずられている老婆がかわいそう。何をしてしまったんだろう。だってうちのご先祖様に仕えてたおばあちゃんって事でしょ?」
由美の疑問を聞いて、私はピンときました。

土地に伝わる昔話に、ここの領主の赤ん坊を谷底に捨てた老婆の話しがあります。
領主の家系が途絶えた後、他所から来た領主に村民達は長い間苦しめられた。老婆は他所から来た領主の姉だと伝わっています。
怨みをかった人間の末路に、私は思わずゾッとせずにはいられませんでした。
神愛
神愛
はい。
行きます

私には小学校、中学校、高校と同じ学校へ通った友達がいます。
彼女のお姉さんは2つ年上で、子供の時はよく遊んでもらっていたものです。

そのお姉さんは中学校の頃には頭角を現し、頭が良くて運動も出来、そして美人。まさに才色兼備という感じで、誰もが羨む存在となっていました。
友達家族にとっても自慢の姉で、一方の私はお姉さんと同じ学年なのにだらしのない兄の存在が恥ずかしいと思ってしまうほどでした。

ところが、そのお姉さんが有名大学へ入学後、就職も決まって卒業目前の時でした。
交通事故で亡くなってしまったのです。
お姉さんのお葬式にはかなり大勢の参列者が来て全員涙にくれ、現実を受け止められていない。どこか異様な雰囲気すら漂っていた気がします。
私は友達4人と順番にお焼香をあげましたが、悲しむ友達の顔もろくに見ることが出来ず、棺に納められたお姉さんの美しい顔をただただ見つめ、信じられない現実に涙が止まりません。
ひまわりに囲まれて、太陽の光に照らされたお姉さんのキラキラした笑顔の写真に目をやると、私は手が震えて止まらなくなりました。

そうして葬儀を終えた後、少し落ち着きたいと思い4人でお茶が出来る場所を探しましたが、辺りは住宅街で適当な場所が見当たりません。
うろうろ探していると、駅の方向に向かっているはずが何処にいるのか分からなくなってしまいました。
スマホで地図を見るものの、地理に疎い私達では活用できません。

しばらくあてもなく歩いてると、電気の点いている看板が見えてカフェのような店を発見します。
脚も疲れたし、とりあえず入ることにしました。

入口の木のドアがとても分厚くて重く、引っ張って開けるのに時間がかかりました。
チャリチャリと鈴の音がして、店員らしき人が背を向けて立っているのが見えます。
ところが、私達が入っても身動き一つしません。

リアクションに困り、友達の1人が「良いですか?」と声をかけた時でした。
「ちょっと待って!」
突き刺さるような勢いの声で言われ、私達は全員驚いて凍り付きました。

振り向いて近づく男性は60代位で背が異様に低く、顔は青白く目はぎょろぎょろしていました。
多分この時、全員がこの店を出ようと思ったに違いありません。

「グレーの人がついて来てる。待って。」
私達を見ると、そう言って店員はキッチンに入って行きました。

「グレーの人?」
「何何??」
「もう出ようよ。」
口々に逃げ出すことを話し合っていると、戻ってきた店員はいきなりシャーっと私達に向かって塩をかけたのです。

その瞬間でした。
ザーッと何かが、私の体の中を通り過ぎていくのを感じました。
今までに無い感覚に戸惑いましたが、その時は怖いので黙っていました。

店員は「どうぞ」と何事も無かったかのように、私達にテーブル席を案内します。
そして
「同じ位の子だね。お友達かね。可哀そうに。」
と呟き、水を置いて立ち去りました。
お葬式の直後でしたから、私達全員がお姉さんの幽霊を連想してゾッとせずにはいられませんでした。
私はそれ以上にさっきのザーッという感覚は何だったのか、気になって食事は頼まず、唯一注文したコーヒーを口にしても味わう事も出来ずに呆然と座っていました。

こうして思い出してみると、この時お姉さんの幽霊は私達について来て、私の中を通過した、とでもいうのでしょうか。
そしてカフェの店員さんには、幽霊がグレーに見えるという事なのでしょうか。
いろいろと確かめたいと思うものの、もう一度あのカフェに入る勇気がありません。
海莉愛
海莉愛
次ね?

私の実家の裏山には「耳塚」というものがあった。
それが一体何物で、どうしてそこにあるのかなど由来は一切分からないのだけれど、年に1度は近くの神社から神主さんが来てお祓いをしていた。

困ったことや無くし物をした時、耳塚へお願いすると誰かの口を借りて知らせてくれる、という言い伝えがあった。
実際、近所の人がたまに立ち寄っているのを見た事がある。


私も最近、お世話になった。
車のダッシュボードに会社の鍵を置いていたはずが、紛失してしまった。
気づいてすぐ戻ったものの、既に鍵は無し。
車には鍵をかけず、ほんの1分たらずしか離れていないその瞬間に消えた。
どこを探しても見つからず、しかもマスターキーだったため会社からはしこたま怒られ、やむなく盗難届を出した。
鍵が見つからない場合は、会社のドアごと交換になってしまう。

私はあっと思って、耳塚へお参りをしてみた。
こんな時の耳塚である。神様でも仏様でもすがりたくなった。
別に信じていた訳ではないけれど、私の責任で弁償となったらかなりの痛手になる。
あの頑丈そうなドアをまるごと替えるなら、幾らになるのか…。
考えただけでも恐ろしい。

数日後、社長室へ呼ばれた。
「大変だったね。」
部屋に入ると、社長は怒っている風でもなく、椅子を勧められた。
「何と説明したらよいのやら。途方に暮れている。鍵が出てきたんだ。つまり私のせいって事にはなるんだが…。」
社長は声を潜めながら話を続けた。

「夢に狐が出てきて、何やら話をしていたんだ。何を話しているのか、聴き取れなくてね。何日も同じ夢をみて、ついに話し声が聞こえたんだ。
『鍵は引き出しだと皆が噂している』
そう言っていた。あの狐は恐らく、社の屋上にある祠の狐だ。先代が祀っていたんだ。」
「はぁ…狐ですか。」
話はそれだけだったが、とりあえず無事に鍵は発見された。

耳塚には何が祀られているのか分からない。
管轄は隣町の神社という事になっている。

母も無くし物をした時、耳塚へお願いをした。
するとテレビで、無くし物がこんな所から、という話題を放送していた。
まさかと思って家でその場所を探してみると、見つかったのだ。

困った時には有益な耳塚だが、私はどこか薄気味悪い感じがして、二度と使わないと心に決めている。
ころん
ころん
つ、次僕ね?


私は怖い話が大好きで、聞くのも読むのも見るのも楽しんでいます。
その当時は特に、怖い話好きが集まって食事会を開く、今で言うオフ会がマイブームでした。
同じ趣味の人達と、同じ話題で食事をする。これ以上の至福はありません。
これはそんな私が、オフ会へ行かなくなったきっかけの話です。

私が所属していたグループは、不定期で時間が合う仲間同士で集まりを開いていました。
毎回20~30人くらいは集まって、ほとんどは同じ面子ではありましたが入れ替わりも多少は有ります。
その日は、特に印象に残る新顔がいました。
プライベートの食事会だというのに、スーツで参加している男性がいたのです。

まぁ普段着でスーツを着こなす方もいらっしゃいますから、あまり気にはしませんでした。
それよりも、その男性はとても顔色が悪く見えました。
(ひょっとしてブラック企業に勤めていて、スーツから着替える事も出来ないくらい余裕の無い生活でもしているのか)
等、余計な心配が生まれます。
ともかくその男性に興味が湧いた私は、話をしてみたいと隙を見計らっていました。

チャンスは直に訪れました。
食事会が始まると、男性の方から私の隣へ来てくれたのです。
早速会話をしてみます。

「よろしくお願いします、▲▲(私のハンドルネール)です。」
「▲▲?変わったお名前ですね。」
「いえ、これは本名ではなくてグループ内で使っているアカウント名ですよ。あなたは何というアカウントですか?」
「アカウント名…。あぁ、私は無いので本名のKで良いです。」

グループに入っていないのになぜここへ来たのだろうとは思いましたが、楽しみの場ですのであまり気にはしませんでした。

「ところで、なんでスーツを着ているのですか?」
「…ちょっと話をすると長くなるのですが。聞いて頂けますか?」
そう前置きをして、男性は語り始めたのです。
「私には学生の頃からお付き合いをしていた女性がいたのです。
こんな話をするとお惚気で恥ずかしいのですが、本当に素敵な女性でした。Mっていう名前なんですけれど。
誰にでも優しくて美人で、笑顔がとてもかわいくて。女性の笑顔って元気が貰えますけど、彼女は特別でした。非常にモテていましたので、きっとそう感じていたのは私だけではないのだと思います。
付き合いは社会人になってからも続き、お互いに結婚を意識し始めたのですが…。

私達の共通の趣味は映画観賞だったので、その日も話題の映画を一緒に見に行っていました。
大きな建物の3階にあるので、エレベーターで昇ったんですよ。
まぁ若いのだから階段を使えよ、って話ですよね。本当、階段を使えば良かった…。

エレベーターには私達2人と、あと男性が1人同時に乗りました。
するとおかしな事が起きます。

私とMの間にその男性が無理やり割り込んできて、私をエレベーターの端へと押してくるのです。
えっ?と思っていると、その男はMへ話かけました。

『久しぶりだね、M。僕のこと覚えてる?』

突然の事で戸惑いまいたが、Mは私よりも困惑しているようでした。
こんな状況では無理もありませんよね。普通じゃない。
男は勝手に話を続けます。

『あ~!良いんだ別に覚えていなくても。うん、僕だけが覚えているって事は、それだけ好きな気持ちがあるってことだ。
僕はSだよ、保育園から中学校まで一緒だった。』

Sと聞いて間があった後、Mは思い出したようですが、それでもこの状況の説明にはなりません。
Mは『S君…覚えてるけど…。何?』
と答えると、Sという男はとんでもない事を言うのです。

『M、君を迎えに来たよ。結婚しよう。』

もう私はブチ切れましたよ。
『お前、一体何なんだ?!』
胸ぐらを掴み、私はSを問い詰めます。
するとSは
『お前こそ誰なんだよ。Mの事を好きだったのは、俺が先なんだ。お前は後。だから俺の勝ち。』

全く意味が分かりませんよね。
もう、相手にするだけ無駄だと思いました。
私はMを抱き寄せエレベーターを出て、立ち去ります。
Sという男は、私達が去る際
『きっと迎えに行くから~!』
などとほざいていました。

映画どころではなくなった私達は、車で帰りながら話合いをしました。
私『あの男、一体何なんだ?!』
M『S君。確かにずっと一緒だった人。でも偶然一緒だっただけで、大人しくて影が薄くて、全然私と関わり無い…。』
Mは震えているのが分かりました。無理もありませんよね。
とりあえず、Sという男は要注意だな、と私も警戒しようと思いました。

次の日、いつものようにMとお互いを励まし合いながら体を起こし、仕事へ出かけます。
もう会社へ着こうという時、Mから着信がありました。

『K、助けて!Sが私の会社に居る!』

とにかく嫌な予感はしていました。でも、こんなに急変していくとは思いませんでした。
昨日、あんな事があったその翌日ですよ。
会社の目前でMの所へ私は向かいました。

Mとはコンビニで待ち合わせをしました。
Mはすっかり青ざめた顔をしていて、とても可哀そうです。
『Sはどこにいる?』
私が訪ねると、SはMの会社前で待ち伏せをしているらしいのです。
早速向かうと、確かに居ました。
Sを見た瞬間、怒りが抑えきれなくなった私は詰め寄りましたよ。

『おい!てめぇ一体何なんだ!いい加減にしろよ!!』
通勤時間に怒声を挙げる私に、通行人が注目しました。
でも私はそれどころじゃありません。
Sは言います。
『だからMを迎えに来た、っていってるじゃないか。俺はMが好きなんだ、君なんかよりもずっと前からね。ずっと見てきたんだ。Mは俺のものだよ。』

次の瞬間、Sは地面に吹っ飛んでいました。
自分が殴り飛ばしていたんです。
自分で自分のやった事が分からないくらい、私は激高していました。
私は周りの人達に抑えられ、警察が呼ばれました。
その場は厳重注意で何とか収まりましたが…。
私とMはそのまま会社を休みました。
Sは去り際、また
『迎えに行くから。』
と言っていました。
こいつは普通じゃない、とんでもないヤツに絡まれてしまったと、私達は震えましたよ。

それからSは、Mの周りに付きまといだしました。
平穏なんて一瞬で終わるものですよ。
Sのヤツは姿をMに見せるものの、声をかけるとかは一切無いんですよ。ただ姿を見せるだけ。
そこがいやらしい。
実際に傷害とかが起きれば、まぁ実際に起きたら大変な事なんですけど、そうすれば警察が動いてくれる。
でも今の状況では、たまたまそこへ居ただけと言い訳が出来て罪には問われない。
でも確実に、Mへ自分の認知が出来るって訳です。
どこへ行くにもSが姿を現すものですから、Mは引き籠ってノイローゼ気味になってしまい、すっかり笑顔が消えました。

引き籠ってもSの攻撃は止みませんでした。
Mの電話番号をどこで知ったのか、暇さえあればかかってきます。
当然着信拒否等、対策をするのですが、Sのヤツとんでもない数の電話番号を持っているんですよね。
こっちを拒否してもまた新しい電話番号で電話をしてくる。きりが在りません。
結局、Mの携帯は解約することとなりました。

これで収まるかと思いきや、今度はMの部屋へ郵便物が届くようになりました。
Sの熱烈なラブレターと共に、子供時代からのMの写真が11枚、毎日届きます。
中には家族でしか所有していないような幼少期の写真や、時期はバラバラですが盗撮したようなものまでありました。
しかも11枚、これってMの誕生日の月なんですよね…。

Mは目に見えて荒れていきました。
家から出れないので会社も辞めましたし、すがりつく人も当たり散らす人も私だけな訳ですから、好きな人とはいえとても辛い関係となりました。
余談ですが、Mは身内に不幸があって天涯孤独の身です。

私の方はと言いますと、あまりのSの執拗ぶりに、もはや感心すら抱いていました。
あの写真も、本当にMの事が昔からずっと好きではないと持っていないものでしょう。
私のMが好きな気持ちは、ひょっとしたら大したことがないのでは、なんて思ったりもしました。
そして心の中では、Mがモテるのが悪いのではないか、なんて事も思ったり…最低なヤツですよね。

追い込まれた私達は、思い切ってSの事を探ってみよう、という決断をしました。
しかしSは、調べれば調べる程掴み所の無い人物なのです。

友人と呼べる人は1人もいない、会社に勤めていた形跡もない。
運動も勉強も特に目立たず、Mの同級生に聞いても、影が薄くて記憶にすら残っていないし知らない、といった状況。
Sの両親は資産家で、大きな家に住んでいました。
3人兄弟の真ん中だったそうですが、実家を訪ねても『そんな子は知りません』の一点張りで、相手にもしてもらえないのです。
Mと違って家族もいるのに、ここまで孤独なヤツは見た事がなく、私は少し同情してしまったんですねぇ。

そしてあの夜。
気晴らしに、私はMを連れて夜道を散歩していました。
すると目の前にSが現れたんです。
『キャーーー!!』
Mは悲鳴を上げました。
私はSに話合いを持ちかけました。
『もう、終わりにしないか。』
と。

S『終わりって?』
K『…俺はもう身を引くよ。』
もうそれしかない、私の唯一の決断でした。
M『嘘?嘘でしょ?!私を見捨てるのねぇ!!』
Mは私に向かって暴れます。
ですがどうすれば良いのか、私には判断が出来ません。
するとSが言いました。
『これを使えばいいじゃん。』

Sを見ると、手には包丁がありました。
S『これで、僕を殺せばよいんだよ。ほら。』
そう言ってSは私に包丁を手渡しました。

きっと私自身も追い込まれていたのでしょう。
あぁ、何だそんな事で良いんだ。
そう思った私は、Sに向かって突進しました。
手が温かい。
そう感じた瞬間、Sはその場に崩れ落ちました。

救急車でSは運ばれましたが、そのまま亡くなりました。
私は殺人の現行犯として逮捕。しばらく刑務所へ服役となったんです。

刑務所の面会には、心配してくれた皆が会いに来てくれました。もちろんMも。
Mは面会の時、ポツリと言っていました。

『Sくんが、まだ私に会いに来るの。』

???
Sはもうこの世には居ないはず…。
その時、私にはMの言った意味が分かりませんでした。

刑期を終え、やっと解放された私はまずMの家へと向かいました。
『Kの好きな豚の生姜焼き、作って待ってるね。』
数日前にMが言っていた言葉を胸に、急かす気持ちを抑えながら行きました。
そしてドアを開けた瞬間、目に飛び込んで来たのは…
Mが首を吊った姿でした。

テーブルには冷たくなった生姜焼きと、Mからの手紙が置いてありました。
手紙には私への感謝や好きという気持ち。
そして、Sが幽霊となって頻繁に現れて、まだ終わっていなかったと綴ってあったんです。

絶望した私は、建物の屋上から投身自殺をして、死にました。
スーツを着ているのは、いつかMと再び会えた時、すぐにプロボーズ出来るようにと準備しているんですよ。」

随分と長い事、スーツの男性の話を聞いていたのですが、不思議と一瞬だったような気もしました。
放心状態になってしまった私を横目に、スーツの男性は
「じゃ、私はこれで。」
と言い残して店を出ていきました。
なんだか頭がボーっとしてしまった私は、会が終わって自宅に着くまで、何だかフワフワとした感覚に包まれていました。

後日。
スーツ姿の男性の話を共有しようとグループのコメントをしていた私は、異変に気付きました。

「スーツ姿の男性?そんな人いましたっけ?」
「▲▲さん、ずっと上の空で話かけても返答なかったから怖かったよ…。」
「なんか機嫌悪くしたのかと思って、皆気を使ってましたよ。」

なんと、誰もこの話を聞いていないばかりか、スーツ姿の男性すら見ていないというのです。

よく怖い話をしていると霊が集まると言いますが、この時もスーツ姿の男性が私達に引き寄せられた、とでもいうのでしょうか。
そして幽霊になったらMさんに会えると思って探し回るKさんですが、会えないままでいるという事は、Mさんはもう成仏してしまったのか。それとも…。

この話の内容は勿論、自分がまさか怖い話の当事者になると思っていなかった私はショックを受け、そういった集まりに参加することは止めました。
皆様も、怖い話が集まる所にはくれぐれもご注意を。
さとみ
さとみ
俺行くわ。


これは私が、今のマイホームに引越してきてから2ヶ月ほど続いた不気味な話です。

念願だったマイホームを手に入れた私は、妻と2歳になる娘と新しく始まる生活に胸を踊らせていました。
友人を招いてホームパーティをしている時も、友人から
「娘さんも良く笑っている。新しい家が気に入ったのかもしれないね。」
と言葉をかけられ、幸せの絶頂を味わっていました。

私の娘は人見知りが激しく、新しい場所での生活で体調を崩したりはしないだろうかと正直不安でしたが、友人の言う通り引越ししてからは機嫌が良さげです。
「娘も少しは大人になったのかな?」
等と、その時は変化を気にしていませんでした。

ところが、娘の様子が明らかにおかしくなっていきました。
何も無い空間で、何かを目で追っていたり、びっくりしたような笑みを突然浮かべたり。
1度や2度だけではなく日常的に起こると、流石に妻も不思議に思ったようです。
「何が面白いのだろう?テレビをつけている訳でも、何か在る訳でもないのに。」
私達は次第に不安を覚えました。

まさかとは思いましたが、私はオカルト的な事を考えていました。
霊に関しては他人事であまり信じてもいなかった私ですが、そんな不安が現実となる出来事が起きてしまいます。
私が職場で仕事をしている最中に、妻から電話が掛かってきました。

「1人で遊んでいた娘が消えた。」
妻はもうパニック状態で涙ながらに話します。
外出などしておらず、突然家の中で消えたと。

普通ならばそんな事、信じられるはずも有りません。
出先で迷子になったなら分かりますが、一緒に家にいて消えた、と言って信じてくれる人がいるでしょうか。
ましてや、娘はまだ小さく1人で家を出て遊びに行くなども有り得ません。

私はパニックになる妻を電話で落ち着かせ、職場からすぐ家に戻るからと必死に説得しました。
上司も私の様子に危機を察してくれたらしく、すぐに仕事を切り上げて会社を出ようとすると、再び妻から着信がきました。

「娘が居た。さっきと何も変わらず、1人で同じように遊んでいる。」
その声は震えていました。

結局その日は仕事をそのまま切り上げて、妻から詳しく状況を聞いてみます。
「娘は1人で遊んでいた。目を離したら居なくなっていた。20分くらいは、本当に家中どこを探しても姿が無かった。」
その顔色と説明している口調からは、とても冗談を言っている様には思えません。
私は背筋には、嫌な汗が滲み出ていました。

この状況を友人に相談してみると
「家を建てた時のハウスメーカーに、過去に土地で何か無かったか聞いてみてはどうか。」
とアドバイスを貰ったので、藁にもすがる思いで当時の営業担当に調べてもらう事にしました。
すると、30年ほど前に近くの土地に住んでいた家族が、無理心中をしていたと報告が出てきました。

家族構成も娘の年齢も、今の私達と同じくらい。
幸せを胸に引越してきたものの、当時のバブル崩壊の波に飲まれ家族揃って命を絶ったのだと推測しました。

その出来事を聞いて、妻も私も何故か不思議と納得した感じがしました。
無理心中で亡くなった家族の事を思うと、悲しい気持ちで一杯になります。
命を絶つ決断をするまで、一体どれだけ苦しんだのでしょうか…。

除霊などの知識は無い私達ですが、お線香と合掌は毎日行うようにしようと決めました。すると娘の奇行もなくなっていきました。
今でも我が家の習慣として、お線香と合掌は毎朝続けています。

幸せでありたいという思いは、誰しもが願う事でしょう。
しかし幸せの裏では、ひょっとするとどこかで苦しんだり不幸があった人がいたかもしれないという事を、忘れてはいけないのかもしれません。

ななもり
ななもり
次俺!

これは忘れもしない、私が小学校5年生の時に体験した話です。

私の家は学区領域のギリギリにありました。
そのため通学の距離が他人より長く、途中で友達と合流は出来ますが、それまでは1人で通学せねばなりませんでした。
小さい頃はその1人道を両親やらおじいちゃん、おばあちゃんが付き添ってくれましたが、高学年にもなって一緒に行って欲しいとお願いするのは恥ずかしく、1人で家を出ます。

そんな私は、その1人道にショートカットがあることに気づきました。
決められた道ではありませんでしたが、途中の雑木林に囲まれた道路を突っ切ると、数分だけ早く学校に近づく事が出来るのです。
雑木林の道は昼間でも薄暗くて気味が悪かったのですが、それよりも時短を優先した私は毎日その道を通るようにしていました。

ある日、その道路に落書きがしてありました。
「こんにちは」
アスファルトの道に、恐らく白い石で書いたのでしょうか。
私もよく子供の頃は、白い石を見つけては道路へ落書きをしたものです。
(近所の子が書いたんだろうな。)
そう思って、足早に通り過ぎます。

数日後、今度は
「あした、くもり」
と書いてありました。
見た時はあぁそうなのか、程度にしか感じませんでしたが、確かに次の日の天気は曇りました。
ですが当たったところで偶然でしょうし、天気なんて当たりそうなものです。

ところが数日後、今度は
「こっせつ、○○」
と書いていたのです。

○○の部分は、実際には人の名前でした。
そしてその名前の人は、私のクラスに実在しています。
まさかね…。
私はそんな事あるはずないと思いながらも、どこか胸騒ぎがしていました。

次の日、名前が書いてあった友達が本当に骨折してしまいました。
体育館で他人と衝突し、鎖骨を折ったのです。
この時になって私は、あの落書きはひょっとすると予言なのではないか、と思うようになりました。

その後も落書きは何度か続き、特徴がみえてきました。
1つ、落書きの内容は次の日に必ず当たる。
2つ、落書きは不定期だが、晴れの日に書かれる。しかし晴れれば書かれる訳ではない。
3つ、帰り道には文字が消えている。私が1人で通学する朝にしかない。
私しかみていないので、他人は誰もこの話を信じてはくれませんでした。
いつしか私は、落書きをみるのは怖さ半分、楽しさ半分といった心境になっていったのです。

そんなある日、落書きにこう書いてありました。

「▲▲、し」

▲▲は近所のおばあちゃんです。
最近体調が悪いとは聞いていましたが、「し」ってまさか…死?
これが的中するとしたら、とんでもない事です。
外れろ!と願ったのですが、予言は絶対でした。
次の日の夜、救急車で運ばれた▲▲さんは、そのまま亡くなってしまいました。
別に私が悪い訳では無いのですが、言いようのない虚脱感が襲います。

それから数日後。
落書きには信じられない言葉が書いてありました。

「つぎは、おまえ」

おばあちゃんが死んだ直後の落書きに、次はお前って…私は明日死ぬ?!
そんなの嘘でしょう!
パニックになった私は具合が悪いと嘘をついて家へ戻り、明日は家から出ないと心に決めます。
家にいれば、ひょっとしたら助かるかもしれない。
一縷の望みに賭けて、翌日は布団でずっと震えていました。

幸いな事にその予言は当たらず、私は中年を過ぎた今でも生きています。
ですが私が休んだその日、学級委員を選ぶ事になっており、休んでいた私は皆の推薦によって強制的に学級委員となってしまいました。

結果的には私の勘違いで済みましたが、予言の威力を知っていた私としては、あの日は生きた心地がしないほど震えあがりました。
ショックを受けると食事が喉を通らないと聞きますが、本当に食事を口に出来ない状態ってあるものなのだと実感した次第です。

この日以降、何となく落書きをみてはいけないと思った私は、雑木林の道路を通ることはしていません。
あの落書きは、一体何だったのでしょうか…。
ジェル
ジェル
次俺な?
私の実家は山間部の集落にあります。
その集落にはお墓もあり、幼い頃から定期的に家族でお墓参りに行っていました。
お墓と言っても、通常思い浮かべる立派な物とは違って、古くて手造り感のあるものです。
それでも私達の集落では先祖代々受け継ぎ、大切にしてきました。

私が子供の頃ですから、今から30年くらい前でしょうか。
いつものように私達家族がお墓参りへ行こうとすると、腰が曲がって黒いぼろきれのような物を着たお婆さんとすれ違いました。
私達の集落はさほど大きくありませんから、全員が顔見知りの仲です。
ところがそのお婆さんは、これまで見た事もありませんでした。

私や兄弟が親や祖父母に
「あれ、誰?」
と尋ねても、誰も口を開きません。
不思議でなりませんでしたが、大人が言わないのならばこれ以上探りようもありません。

そのお婆さんは、お墓の外れにある開けた平原にうずくまり、何かをしています。
何をしていたのか気になりましたが、そのうち我家の墓参りが終わって帰る時間となってしまい、場を後にしました。
時が経ち、大人になった私は都会に出て居を構えていました。
祖父母も既に亡くなり、父母だけで人里離れた過疎地に住むのもどうかと思って同居に誘うものの、「長年生活している場所が一番」という両親は頑なです。
それなら久しぶりに里帰りでもしようかと思った私は、せっかくだからとお墓にも足を運んだのです。

お墓に着くと、なんと幼い時にすれ違ったあのお婆さんとまた出会いました。
しかも私があの時に見た姿と寸分違わず、同じなのです。
老婆の印象がとても強かったものですから、私は鮮明に覚えていました。
その記憶と、全く同じなのです。

呆気にとられて動けなくなっている私に気づかないのか、お婆さんは私を無視してそのままお墓の外れへ向かい、うずくまりました。
子供の頃に見た光景と同じ状況です。
一体何をやっているのだろう…。
気になった私は息を殺して近づき、確認してみる事にしました。

うずくまった老婆の目前には、血が散乱していました。
何かの動物を殺して解体しているようで、夢中になって毛が付いた肉片を、包丁のようなもので細かく切り刻んでいます。

予想外の光景に、文字通り血の気が引いて私は倒れそうになりつつ、なんとか踏ん張りました。
その時に音を出してしまい、気づいたお婆さんは振り向き、私と目が合いました。
命の危険を感じた私は墓参りどころではなくなり、とにかく必死に逃げ帰りました。

この出来事を両親に話した所、意外にもすんなりと聞き入れてくれ、やっと重い口を開いてくれたのです。

実は私が子供の頃、両親も墓場でそのお婆さんとすれ違ったのは気づいていた。
そのお婆さんは、タブーとされている一族の末裔であるという事。
集落では無き存在としており、人前にも滅多に出ないので、子供には言うまいと今まで伏せていたという事。
老婆がうずくまっていた場所は、そのお婆さん一族のお墓があるという事。

しかし、ここでおかしな事に気づきます。私が子供の頃に見た時点で、お婆さんはかなりお婆さんでした。
それが30数年経った今でも生きていて、しかも見た目に変化がありません。
これは一体どういう事なのでしょうか…。

両親は
「触れない方が良い事も、世の中にはある。それに昔を知る人間はほとんど居なくなり、詳しい内容は父さん母さんも知らない。ひょっとしたら爺さんなら何か知っていたかもしれないが、もうこの世には居ないからなぁ…。」
と言ったきり、後は分からないの一点張りです。

私の故郷はもはや限界集落で、近い将来には消滅するでしょう。
あのお婆さんは幽霊だったのか。人だったとしても、もはや人間ではなく山姥なのかもしれません。
お婆さんの存在は謎のまま埋もれて忘れられていくのだと思うと、どこか寂しいような気もしてしまいます。


一回きるね!
続き、文字の制限足りんかったから、
きるけど、もうひとつも、^ - ^2話だからね!
語彙力なくてごめん!

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