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第1話

迷子
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2020/12/07 09:46
「さとる…?」




薄暗い廊下。呆然、そんな表現がぴったりなほど頼りない様子で、呪術師最強と呼ばれる男は私の前に立っていた。



傑が居なくなり、処刑対象になった。



その事をいちばん辛く思っているのは、きっと悟だ。



彼はふらふらと一歩一歩、私の方に近づいてきて…突然抱きしめられた。というより、寄りかかられた。目の前が見えなくなる。あまりの重みにぐらりと倒れそうになるけれど、必死に踏ん張る。




「ちょっ、悟…」





「なあ、部屋入れてくんね」




1拍呼吸を置いたあと、悟はもう一度言った。




「ねえ、部屋に入れてくれないかな」




丁寧に言い直して。




「…ッ」




思わず息を飲む。年下が萎縮してしまうから言葉遣いを治せと、悟に諭していた傑。




「…いいよ」




思わず答えた。



悟も私も年頃の男女だけれど。



こんな迷子の子供みたいな人を放っておけなかった。



大きな体なのに、どこか頼りなくて。



目を離すと消えてしまう気がした。

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