第4話

3話 美樹はどこへ?
38
2022/10/08 03:49
しばらくして、僕と蓮は一緒に学校をでた。

せっかくだし、心の中のモヤモヤを全部話してしまおうかな。

そうしたら、心が少し、明るくなると思うから。

それに、蓮だって不自然に感じてモヤモヤするところはあると思う。

だから、せっかくだから話し合いながら行こうかな。

そう思い、思い切って蓮に言ってみる。
一真
一真
蓮、ちょっといい?
僕が声をかけると、珍しく、そこまで無言だった蓮がこちらを向いた。
蓮
何?
一真
一真
いきなりなんだけど、美樹のこと、どう思う?僕は…特に根拠はないけど、嫌な予感がするってところ。蓮は?蓮はどう思う?
蓮
俺は…俺も一真と同じ。根拠はないけど、嫌な予感が少し…いや、嫌な予感しかしない。だから、正直に言うと、美樹の家に行くのが少し怖いんだ。誰かの家に行く時、こんなことは感じたことがないんだ。
一真
一真
うーん…僕も、何か起こりそうで怖いけど…それでも、行ってみる。ここまできて、引き下がるわけには行かないからね。蓮はどうする?怖いなら、行かなくてもいいんだよ?
蓮
いや、行く。一真には負けたくないしな。
一真
一真
望むところだ!
蓮
ま、冗談は置いといて。ほら、美樹の家に着いたぞ。準備はいいか?
一真
一真
なんで、そんなに偉そうなの。準備くらいできてるよ。そういう連はどうなの?
蓮
俺だってそれぐらいできてるさ。…じゃあ、インターホンを押すよ。
一真
一真
りょーかい!
ピーンポーン



インターホンの音が陽気に響く。

でも、それを合図に、僕と蓮の周りにはその音に似つかわしくない思い空気が流れる。

嫌な予感が胸の中で風船みたいに膨れ上がって、はち切れそうだ。

でも、はち切れてしまったら僕は僕じゃなくなる。

だから、少しでも安心しようと、『大丈夫』と自分に言い聞かせる。

大丈夫、大丈夫。

きっと。

少なからず、蓮も同じ気持ちだろう。

なら、耐えるんだ。

蓮に負けないように。

そんなことを考えていると…
美樹の母
美樹の母
はーい。どちら様?
美樹のお母さんの声がインターホンから聞こえてきた。
一真
一真
あ、一真と蓮です。美樹ちゃんが心配できました。
蓮
少しでいいので、お話しできませんか?
美樹の母
美樹の母
あぁ…とりあえず、ドアを開けるから、家に入ってくれる?
一真
一真
わかりました。蓮、行くよ。
蓮
あぁ。
話をしてくれるのかな?

きちんと聞いていなくちゃ。
美樹の母
美樹の母
一真くん、蓮くん、久しぶりね。いらっしゃい。
一真
一真
はい。
蓮
お邪魔します。
今思ったのだが、美樹のお母さんの顔はやつれていた。

家の中も、妙に静かだ。

なんでだろう。

例えるならば…クラスで一番の盛り上げ役がいない教室、とかかな。

とりあえず、美樹のお母さんについて行こう。

しばらく話して美樹のお母さんが案内してくれたのは、リビングではなく美樹の部屋だった。

なぜ…?

でも、理由を知る時はすぐにやってきた。
美樹の母
美樹の母
美樹が…行方不明になったの。
それが、美樹のお母さんが発した言葉だった。

絞り出すような声に、これは現実で起こったことだと思い知らされる。

そこで、美樹のお母さんから紙切れをもらった。

何かが書いてある。

恐る恐る、読んでみると…



『お母さん、お父さん、一真、蓮へ

 突然姿を消してしまってごめんなさい。
 私は少し遠いところへいかなければいけないことになりました。
 死んでしまったわけではありません。
 でも…仕方がなかった。
 避けようがなかったことなんです。
 “話”を聞いてしまったからには。
 それと、最後に伝えておきます。』



『私を探さないで   美樹より』




どう…して?

話って?

遠くって?

きっと、僕たちが知ってはいけないところ。

それは、わかる。

でも。

一つ疑問が出てくる。

知ってはいけないところなんて、知らないところなんて、ないはずだ。

おそらく、専門家に聞いてもそんなところはないと言われるだろう。

だけど、死んだわけではない。



じゃあ、美樹はどこへ?

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