しばらくして、僕と蓮は一緒に学校をでた。
せっかくだし、心の中のモヤモヤを全部話してしまおうかな。
そうしたら、心が少し、明るくなると思うから。
それに、蓮だって不自然に感じてモヤモヤするところはあると思う。
だから、せっかくだから話し合いながら行こうかな。
そう思い、思い切って蓮に言ってみる。
僕が声をかけると、珍しく、そこまで無言だった蓮がこちらを向いた。
ピーンポーン
インターホンの音が陽気に響く。
でも、それを合図に、僕と蓮の周りにはその音に似つかわしくない思い空気が流れる。
嫌な予感が胸の中で風船みたいに膨れ上がって、はち切れそうだ。
でも、はち切れてしまったら僕は僕じゃなくなる。
だから、少しでも安心しようと、『大丈夫』と自分に言い聞かせる。
大丈夫、大丈夫。
きっと。
少なからず、蓮も同じ気持ちだろう。
なら、耐えるんだ。
蓮に負けないように。
そんなことを考えていると…
美樹のお母さんの声がインターホンから聞こえてきた。
話をしてくれるのかな?
きちんと聞いていなくちゃ。
今思ったのだが、美樹のお母さんの顔はやつれていた。
家の中も、妙に静かだ。
なんでだろう。
例えるならば…クラスで一番の盛り上げ役がいない教室、とかかな。
とりあえず、美樹のお母さんについて行こう。
しばらく話して美樹のお母さんが案内してくれたのは、リビングではなく美樹の部屋だった。
なぜ…?
でも、理由を知る時はすぐにやってきた。
それが、美樹のお母さんが発した言葉だった。
絞り出すような声に、これは現実で起こったことだと思い知らされる。
そこで、美樹のお母さんから紙切れをもらった。
何かが書いてある。
恐る恐る、読んでみると…
『お母さん、お父さん、一真、蓮へ
突然姿を消してしまってごめんなさい。
私は少し遠いところへいかなければいけないことになりました。
死んでしまったわけではありません。
でも…仕方がなかった。
避けようがなかったことなんです。
“話”を聞いてしまったからには。
それと、最後に伝えておきます。』
『私を探さないで 美樹より』
どう…して?
話って?
遠くって?
きっと、僕たちが知ってはいけないところ。
それは、わかる。
でも。
一つ疑問が出てくる。
知ってはいけないところなんて、知らないところなんて、ないはずだ。
おそらく、専門家に聞いてもそんなところはないと言われるだろう。
だけど、死んだわけではない。
じゃあ、美樹はどこへ?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。