第2話

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2019/01/03 10:25
やっぱり、ちょっと不安になった俺は放課後第2体育館の陰にしゃがみ込んだ。
「あ……来てくれたんだ」
あの子だ。
「……君が呼び出したんでしょ。で、何の用ですか?」
「……ツキシマ……ケイくん。わたし、あなたが好きです」
「……気持ちは嬉しいけど、僕今そういうの興味ないんで、ごめんなさい」
ぺこりとツッキーが頭を下げる。
俺はほっと胸をなでおろした。
帰ろうと思って腰を上げたその時、
女の子がにやりと笑ったのが見えた。
「そう言うと思ったの。でもそんなところも、好きよ」
「は?何言って……」
「あなたのことならなんでも知ってるの。1年4組、バレーボール部、誕生日は9月27日。ショートケーキが好物、身長190.1cm、体重68.4kg。ヤマグチタダシくんと仲がよくて、小学校からの仲よね。お兄さん……ツキシマアキテルくんの影響を受け、烏野高校バレー部へ。1年生のレギュラーで、それから……」
「もういいっ!」
ツッキーが大きな声で、とめどなく溢れる彼女の言葉を止めた。
「なんなの……君。気持ち悪いにも程があるでしょ」
「だって。あなたが大好きなの。寝ても覚めてもあなたのことばっかりなの。ねえ、どうして分かってくれないの?こんなに好きなのに!」
「……ごめんなさい。僕はその気持ちに応えられない」
「好きな人がいるの?」
「……」
「そうなのね。いいわ、そんなの関係ない。わたしがあなたの一番になって、ずっとあなただけを見てあげる」
その子はそう言うだけ言って、また走っていった。
ツッキーは苦い顔をして、その場から立ち去った。俺も慌てて家に帰った。
家に帰っても、俺はあのときのことで頭がいっぱいだった。
あの子がツッキーに何かしないか、ツッキーはどう思っているか、何より……
「ツッキー、好きな子、いるんだ……」
その事が一番重かった。どっしり胃の中で消化しきれずに残っている。
どんな子なんだろう。可愛いのかな。ツッキーが好きになるくらいの女の子って、どんな子だろう。
突然、不安と目眩と吐き気に襲われた。身体中を掻きむしりたくなるような、何かを壊したいような衝動に駆られる。
「はァ……あっ、アッ……」
気がつくと、俺は風呂場に立っていた。
そして、右手には鋭く光るカッターナイフを、左手には脈打ちながら血を吐く傷口があった。
「お……俺、リストカット……?しちゃったの……?!」

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