優しすぎて、暖かすぎる場所だ。
まるで、「ここに帰ってきて良い」、「どんな貴方も受け入れる」と言われている様な気さえしてしまう。
昨夜の夢から、私は都合のいい事ばかりを捏造しているのだろうか。
目の前にいる、陽だまりのような彼らに私は既に嘘をついている。
私の事は勿論、彼らが危険にさらされている事も私は隠し続け、黙っている。
轟くんの様に、私を不信に思い、怖がる人だって居るだろうに。
何度も怪我をして、何度も心配をかけて、
迷惑をかけ続けてしまった私なんて…
もう、とっくに…
いつからだろう、
こんなにも皆と離れたくなくなってしまったのは。
停学中もずっと、皆が登下校しているのが見えるあの部屋で、皆の事を考えていた。
(一体、いつから…)
自分の身を守る為に、ここに入ったも同然だった私。
本当は、
ジッパーの手から怖くて、逃れたくて、
このクラスの誰かがジッパーに狙われている事なんて、
自分を雄英高校で極秘に匿ってもらいたい一心で出したものに過ぎないのかもしれない。
(こんなに…離れ難くなってしまったんだろう…)
すんとした冷静なトーンで轟くんが口を開く。
傍から優しい声がして、その主の方へと視線を移す。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。