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午後になって、早速張り込みを開始する。
が、何時になってもそれらしき人の足音はしない。
更に足音がしたかと思えば、相手は相澤先生だった。
ドアにぴったりと耳を付けていたので、例の人が来たのだと思い込み、勢いよく開けてしまった。
(恥ずかしいっ、ずっと相澤先生を待ってた人みたいになってる!それでなくても、絶対誰か来るのを待ってた、って思われてる!恥ずかしい…っっ!)
差し出される袋を受け取り、中身を見ていいと言われたので、確認する。
コスチュームと同じ手袋の形。
違うのは、袋の中に腰に付けるベルトが一緒に入っていて、そこに手袋が下げれる様に部品が付いている所だ。
さりげなく外の壁へと視線を移す。
2日間続いた謎の青いバッグは勿論置いておらず、バッグが回収された後、誰か来た形跡も無い。
相澤先生は仕事に戻る、と言って、私に背を向けた。
私は慌てて、「ありがとうございました。」と頭を下げる。
微かに聞こえた、その言葉に驚きを感じながら、私も小さな声で答えた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。