(常闇くんはすごいなぁ…)
今まで話したことがあまり無かった常闇くんが、こんなに強い人だったなんて思わなかった。
クールで、冷静で。
でも、誰かの欲す優しさをくれる。
だから、木奥もそんなに重く考えなくていい。自分のペースでゆっくり進め。
『プーーーーッ』
常闇くんの言葉と重なるように、実習スタートのサイレンが鳴った。
(なんだ、怖いものって、皆に有るんだ。)
ゆっくり立ち上がる常闇くんの横顔を私はじっと見る。
(少なからず、私だけじゃなくて、常闇くんも一緒なんだ。)
攻めに行くか?
そだね。
しゃがんだ私を見下ろす常闇くんが、手を差し伸べる。
自分の力を改めて考えた後だから、
誰かの手を握るのが久しぶりに怖くなった。
(怖い、怖い、怖いけど…)
『ギュッ』
進まなきゃ、だね。
常闇くんが伸ばしてくれた手を、私はしっかりと握り返す。
そして、それを頼りに立ち上がった。
私の言葉にクールな彼の表情には一瞬、「?」の表情が見えた。
? あぁ。
常闇くん、ありがとう。だいぶ前向きになれた。焦るのはやめにする。自分のペースで皆に追いつけるように頑張る。
あぁ。木奥はそのままでいい。
常闇くんはきっと良いヒーローになれるね。私、救われたもん。
そうなれるよう、俺も努力する。木奥の背負いすぎた物が、少しでも下りたなら良い。
…常闇くんが、何かあった時、今度は私が常闇くんを助けれる様になる。
常闇くんの2つの瞳が私をとらえて、離さなかった。
それは私も同じで、常闇くんの目を見つめて、決して離すつもりなんて無かった。
いや、助ける。
……木奥なら、任せられそうだな。
本当に?
確信は無いがな。
ですよねー…。
でも、………頼む。
…うん!
私はコスチュームの裾等に着いた、微かな汚れを払った。
じゃ、常闇くん、
行くとするか。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。