『カチカチカチカチッ…』
下から氷柱が何本も出てくる。
私はその上を移動しながら、少し高い氷柱の上に立っている轟くんを目指す。
ようやく前まで来ると、轟くんの手が私の方へと伸びる。
私はしゃがんで足を払い、その速度で一回転したうえで、轟くんの肩口に蹴りを入れる。
あくまで蹴り。
少しでも手に触れたらと思うと、怖い。
数歩後ろに下がった轟くんを前に、私はずれたお面を直した。
下がった轟くんの足場を支えるために、氷が崖のような作りになっていた。
気づけば、どの木々よりも高い。
(…これ、後で色々と言及されるよね…相澤先生怖いなぁ。)
生身の手を見て、そう思う。
その姿を見てなのか、轟くんの口が動いた。
私は自分の足元を見る。
言われるまで気づかなかった。
足の裏から赤く腫れ上がるように、
そして完全に、薄い氷が足の裏の皮膚に張っている様に冷たくなっていた。
轟くんに指摘されてから、足が痛み出す。
(気づかなきゃ良かったな…)
と、また私の足元から氷が突き出る。
大きく飛び出た氷は、手を付き逆立ちのように避けた私に続けて伸びてくる。
余裕の無い中で気づいたこと。
轟くんと私が戦う、この氷の崖はかなりの斜面になっている事。
私はある事を思い付くと、伸びてくる氷を後ろ…ではなく、前へと踏み出すようにして避ける。
そのまま、かなりの斜面の氷の崖を滑り出す。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。