第83話

『当時』の幼い女の子
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2018/09/01 09:01
どこか見た事のある部屋の中。
私はすぐに昔住んでいた家だと分かった。
あなた

…個性強制増幅剤のせいで、消した記憶も鮮明に思い出せるって事か。もしかしたら…

(個性の制御…)



頭に嫌なものがよぎったが、とりあえず、ほっぺをつねってみる。
あなた

痛…くない。

どうやら夢の中らしい。
あなた

とりあえず、お母…さんに…

『お母さん』というワードに自分でも驚いた。
その瞬間、私の後方で『バサッ』という何かが倒れる音がして咄嗟に振り返る。

それは紛れもなく私の母親だった。
母の体からは赤い液体が海のように広がっており、微かにこちらに手を伸ばしていた。
あなた

お母さん!!!!

手を取ろうとすると、今度はふと目の前に現れた父親が母の上に重なっていた。
二人とも血まみれだった。
あなた

…っ。

人影が横目に映った気がして、そちらに目をやる。
そこには大きな姿鏡が1枚あっただけだった。

違うのは、『今』の私じゃなく、
母の形見のブローチを襟元の中央部分に付けた、『当時』の幼い女の子が居たことだった。
あなた

…え

丸く怯えた目をし、顔にいくつかの血の数滴が飛んでいた。
その女の子が口を開いた瞬間、私は何を言われるのか怖くなって走り出す。
あなた

思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない…

分かってはいた。

あの女の子は、
あなた

思い出したくない!

私であるということを。

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