朝のSHRが近くなった頃。
誰もが緊張し、心配していた。
私は席につき、静かに待っていた。
それはこの教室に居る、誰もがそうだった。
(イレイザーヘッド…)
『ガラガラガラ、』
そこには包帯をぐるぐると頭に巻き、もはや顔が見えず、さらには腕も三角巾で固定している私達の担任の姿があった。
そして、衝撃的な言葉を告げられる。
(え、なんだろ、)
雄英体育祭…幼い頃に家の中で大人しくテレビで見ていた覚えがある。
雄英体育祭は普通の体育祭じゃない。
プロヒーローを目指すのであれば、ここで目立ち、ヒーロー事務所から多くの支持を得なければいけない。
けど、正直、そういう問題ではなかった。
私の独り言に隣の轟くんが反応する。
あんまり隣の席の人と喋らなくて、つい、驚いてしまう。
こんな会話だけど、クールな轟くんが私の独り言なんかに反応してくれて、話せたことに私は嬉しかった。
(勝己にこの事、話そーっと。)
色んなコースからたくさんの人が来る。
それは問題なかった。
関係者はもちろん、観客がたくさん来る。
それもそこまでは問題無かった。
問題は…中継が全国に流される、つまりメディアの報道があるということだった。
(光己さんに前髪切ってもらっちゃったから、余計に素性がばれるしなぁ…)
相澤先生の朝礼を終えた後、お手洗いに来た私は鏡の前で前髪に触れながら考えていた。
(でも、可愛いなんて初めて言われたし、視界も見えやすくて、凄く快適だっ。)
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。