後は氷柱を順に渡ればいい。
足にキリリとした痛みが走った。
さっきからしているとは思ったが、あまり気にはなっていなかった。
でも、足の裏を見て初めて気づいた。
そして、" アイツ "が、ヘロインが私のいる方向が分かった謎が直ぐに解けた。
(轟くんの氷を滑ってたから、切れたんだ。出血…ヘロインの複合個性に鼻…血の匂いね。)
私が足が痛む素振りを見せてしまったからなのか、常闇くんはそう私にストップをかけた。
多分、私自身、分かってた。
あんな事になるという事は、頭のどこかにあったはずだった。
それでも何とかしたいって思ったのは、
君たちを自分の持つ力で守りたいって思ったから。
常闇くんを説得して、予定通り黒影の力も借りて上へと投げて貰った。
空中の涼しげな風が私を包む。
氷柱の上に飛び乗り、次から次へと順を追って上へと上がっていく。
轟くん達の方向に行くにつれ、噴煙の海が濃くなっていた。
少し止まって、ズレたお面を直すと、袖で汗を拭った。
ふと轟くん達の方に顔を上げる。
けど、そこには勝己の姿はなく、
悠然と氷の崖の上に立つ轟くんと、
轟くんの背後の空から迫るコンクリートブロックの影があった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。