第155話

君の手袋
11,243
2019/07/05 10:04
あなた

…ごめん、やっぱりいいよ!まだ歩けると思うし! それにいつまでもデクくんの実習を邪魔する訳には

緑谷 出久
……もしかして、手袋が無いから?
あなた

え、

緑谷 出久
あ、いや、潔癖とかなのかなぁって。初めて会った時も、リカバリーガールに『手袋か軍手が欲しい』って言ってたし、常に付けてるし…
あなた

………潔癖じゃ、ないんだ。個性が、

緑谷 出久
…?
あなた

強く…なりすぎちゃって、さ、コントロールが出来なくて。

緑谷 出久
もしかして、USJ襲撃事件の時の個性強制増幅剤ってやつのせい?
あなた

よく覚えてるね(笑)…まぁ、そんな感じ。

デクくんにはここまでの事なら、伝えてもいいと思った。
オールマイト達と話していた、個性強制増幅剤の件もデクくんの耳には入ってる。



でも、瞬発能力が高いっていう個性が嘘だって事、

本当の個性の事、

デクくんとオールマイトの師弟関係を私が知ってる事、

雄英高校に来た理由、

追われてる身である、って事等はまだ言わなくていい。
緑谷 出久
な、なら、手袋してないあなたさんが僕の上に乗ったら…
あなた

ん?

緑谷 出久
あなたさんだけが高速で動くって事?!
あなた

え?!それどういう事?!

その瞬間やっと立っていた姿勢なのに、プクククッと笑ってしまい、座り込んでしまった。


(上で高速移動ってなんなの(爆笑))
あなた

はぁ〜…ふはっ、あはは

落ち着いたのにまた笑ってしまう。
私の身体はリラックスしてるらしい。
あなた

はぁ〜

涙が出そうになって自分で拭うと、目の前にデクくんがこちらを向いて座っていた。
緑谷 出久
あなたさん、手、出して。
あなた

…?

緑谷 出久
ほら、出して。
おずおずと差し出すと、デクくんはするりと自分の手袋を外した。
そして、私に触れないように気をつけて私に手袋をはめてくれる。
緑谷 出久
はい、これで大丈夫。
あなた

あ、で、でも!

緑谷 出久
僕は大丈夫!気にしないで!
あなた

…ありがとう、デクくん。

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