第139話

尾白くんは凄い
11,325
2019/06/18 11:56
尾白 猿尾
まさか、あの一瞬で取られるなんて。
尾白くんは視線をを微かに下ろし、今度は私にふっと笑った。
私は地に尻をつけたまま、「ははは」と控えめに笑う。
尾白 猿尾
やっぱり爆豪とやっただけあるんだね。
あなた

あぁ…でも、負けちゃったけどね。

尾白 猿尾
俺、まだまだだな。
困ったように笑う尾白くんの気持ちが、じんわりと伝わってくる。

全部分かるなんて言わないし、言えない。

こんな時、どんな言葉をかけたらいいのかも、ジッパーの研究室に閉じ込められていた私には分からない。


(こんな時、デクくんなら…どうするんだろう。)
あなた

あ、のさ、…負けた相手のアドバイスなんて聞きたくないって思ってたら、ごめん…なんだけど、

尾白 猿尾
???
あなた

あ、別に、尾白くんがアドバイス聞かないなんて思ってる訳じゃなくて、…その、

いつもより多めに息を吸って、吐いた。
あなた

尾白くんの戦い方は直近型だと思うんだけど、戦う範囲の狭い様な場所だと尾白くんは凄く有利だと思う。特にこういう森とか…木々の太い枝とかに尻尾を絡めての攻撃、凄く効いた。

尾白くんの表情は真剣に変わった。

その表情に惑わされないように、私は言葉を続ける。
あなた

後、スピードも上がってた、と思う。ごめん、手合わせは初めてだし、何言ってんだって感じかもだけど…。でも、身体が固いからもっとラフにしてもいいと思…います…

最後の辺りはもはや尾白くんに届く声の大きさなのかも怪しかった。

おずおずと尾白くんの顔色を窺う。
尾白 猿尾
ごめん、気使わせたね。ありがとう。
あなた

ううん、そんな事は!本当にそう思ったから、伝えたいって思って…

尾白 猿尾
俺、木奥さんと関わる事あまり無かったからさ、手合わせられて本当に良かった!
あなた

こちらこそ、尾白くんの凄い所を間近に見れて良かった!…今度、技とか教えて欲しいって言ったら…

尾白 猿尾
もちろん、俺で良ければ、いつでも!
尾白くんが「立てる?」と手を差し出す。
私は頷いて、握り返した。

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