第133話

常闇くんと黒影
11,806
2019/06/12 12:05
常闇 踏陰
何だ?
あなた

常闇くんは、怖いって思うこととか無いの?

常闇 踏陰
あなた

常闇 踏陰
…不安なのか?
あなた

うん、正直ね。怖いなって思う、皆に追いつけなかったらって考えると。

常闇 踏陰
…誰だって怖いと思う事ぐらいある。
あなた

…そうだよね、ごめん。

常闇 踏陰
いや、そういう意味で言ったんじゃない。その…木奥だけじゃない、って伝わればいいと思ったのだが、
あなた

うん?

常闇くんの目に少し笑みが一瞬だけ見えた。
常闇 踏陰
強いて言えば、だが、
あなた

常闇 踏陰
俺は暗闇が怖い。
あなた

……それって、どうしてか聞いてもいい?

常闇 踏陰
ああ、別に構わない。俺の個性は黒影。
あなた

うん、それは知ってるよ。かっこいいよね。

常闇 踏陰
こいつは俺の分身みたいなものだ。
常闇くんは自分の身に視線を落とした。
私はその姿を見て、少し胸の内が暖かくなるのを微かに感じた。
あなた

ダークシャドーの事、大切なんだね。

常闇 踏陰
そう言われると、恥ずかしいがな。…俺が暗闇に呑まれると、ダークシャドーを抑えられなくなって、
あなた

うん。

常闇 踏陰
暴走させてしまう。
あなた

怖い。
その感情が手に取るように分かった。

誰かを救いたいと思ってる力が、手が、
誰かを傷つけてしまうものにだって変わってしまう。

常闇くんにはその力が十分にある事を、常闇くん自身で分かっていた。


それは私だって同じだった。

この場で、今、常闇くんの大事な記憶や思い出をきっと意図も簡単に奪えてしまう。


ほら、手を伸ばせば、
こんなに近い所に常闇くんがいるんだから。
常闇 踏陰
だが、己の力に怖がる人間はきっと俺だけじゃない。
常闇くんの言葉に、落としていた私の視線が自然と上がった。
常闇 踏陰
只、俺がまだ難しいだけだ。必ず、出来るようになってみせる。

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