第240話

エピローグ🍋/息を吐いた
12,915
2020/03/01 17:00
────…声が、



聞こえる。






『今日、丸顔達が来てたぞ。半分野郎も切島も…てめぇの好きなクソナードも……ババアもな。』




スルリと優しい手つきで私の髪を撫でている。




『てめぇはここまで来ても何にも話さねぇんだな。さっさと目開けろ、心配させんな。』




微かに甘い匂いが近づいて、




『明日はてめぇの為に1位とってやる、だから目覚ませ、』




少し低くて、いつも私を大切にしてくれる柔らかい声で名前を呼ぶ。




『あなた。』




(か、つ…き…?)




深い微睡みの中、


私の唇に何かが微かに優しく触れた。




『…』




ああ…やっぱり、こういう時は勝己を呼び出しちゃうんだな…






都合のいい私、都合のいい私の幻想。



何度も貴方を想い出す。







相澤先生怒ってるかな…

いや、リカバリーガールの方が怒ってる…


女子の皆ともっともっとお話したかったな…


そもそも心操くんはちゃんと逃げられたのかな…

女優さんも、観客の人も怪我がなければ良いんだけど…


光己さん、勝さんにお礼言っておけば良かったな…


結局、オールマイトの事、好きだったな…


デクくんは本当に格好良かったな…

轟くんには最後まで付き合わせちゃって…



勝己は凄く、怒ってたり…するの…かな…





歓迎会しようって言ってくれたのに、


体育祭出ようって言ってくれたのに、


本当の事…ずっと隠してて、



最後まで言えなくて、







皆、








ごめんね…





でも、私、願ってるから。

皆が素敵なヒーローになれることを、



ずっと、ずっと…



願ってるから。




だから、どうか…












私の事は忘れて下さい。






全てが夢のよう、

全てがまるで桃源郷のようだった。


目を覚ませば消えてしまう程、

儚くて美しくて、かけがえのない、


私にとっての世界の全て。






目を閉じたままの私は大きく息を吸い、


皆が私の事なんて忘れられる様に、



皆の夢がこの先、脅かされないように祈って、






深く、深く、深く…



















───────息を吐いた。







( f i n .)

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